metamorworks / Shutterstock.com
スマートフォンでUber Eatsを利用して食事を注文したり、Netflixで動画を視聴したりするのが当たり前になった現代。私たちの食を支える農業や漁業の現場でも、同様のデジタル革命が進んでいます。本稿では、「デジタル化するか、さもなくば死か」――まさにこの言葉に直面する1次産業において、IoTやAI、ドローン、ロボティクスといった最新技術が、長年“勘と経験”に支えられてきた現場をどのように変えつつあるのか。その可能性と課題を、具体的事例を交えながら紹介します。
スマート農業・スマート水産業の拡大
近年、スマート農業(酪農・畜産を含む)やスマート水産業の分野では急速な進展がみられます。農林水産省が進める「スマート農業実証プロジェクト※1」では、全国217地区でAIやIoTを活用した実証実験が行われており、多くの地域で生産性の向上や労働時間の削減といった成果が報告されています。実際、ICTの導入によって経営改善に成功した農業法人は全体の約60%に上り、従来の数倍の収益を上げるケースも出てきています。
酪農や畜産の分野でも、搾乳や飼料管理の自動化による省力化や効率経営が進展中です。さらに水産業では、ビッグデータとAIを用いた漁獲予測、IoTとロボティクスを活用した陸上養殖の広がり、さらには仲買人(卸売市場で買い付けを行う卸業者)の目利きを補うマグロ品質測定アプリ「TUNA SCOPE※2」の登場など、デジタル化が確実に進んでいます。
では、こうした潮流の中で、ドローンやロボティクス、IoT、そしてAIといった先端技術は、どのように一次産業の再構築を支えているのでしょうか。
※1:農林水産省(2025)『スマート農業をめぐる情勢について(R7.5月版)』(https://www.maff.go.jp/j/kanbo/smart/smart_meguji.pdf)
※2:TUNA SCOPE 事務局(https://www.tuna-scope.com/jp/)






