2025年9月にPayPayのアウトバウンド事業が本格的にスタートした(筆者撮影、以下同)
PayPayが2025年9月から韓国で日本人向け決済サービス「海外支払いモード」を開始した。訪日外国人向けに展開してきたインバウンド決済の知見を、日本人の海外利用に転用する試みだ。キャッシュレス決済の国内シェア首位を走る同社が、なぜ今、海外に目を向けるのか。その背景と戦略を追った。
インバウンドで確立した独自のビジネスモデル
PayPayは2025年9月16日の記者説明会で、韓国での日本人向け決済サービスを開始することを発表した。今回の展開は、訪日外国人向け決済サービスで蓄積した知見を、逆に日本人の海外利用に生かす形だ。
そもそもPayPayのインバウンド事業、つまり訪日外国人向け決済サービスとは、海外からの観光客が自国で使い慣れた決済アプリをそのまま使って、日本のPayPay加盟店で支払いができる仕組みだ。利用者は新たなアプリをダウンロードする必要がなく、PayPayのQRコードを読み取るだけで決済が完了する。
2018年に中国のAlipay(アリペイ)との連携から始まったこのサービスは、6年で飛躍的な成長を遂げた。現在は14の国と地域で26サービスと連携し、訪日外国人の78%をカバー。取扱高(GMV=総流通額)は2019年度比で約3倍に拡大している。
成功の鍵は緻密なマーケティング戦略にあった。まず、連携先の海外アプリ内で訪日前からPayPay加盟店の利用を訴求。次に、利用者が日本に到着するとアプリの画面が自動的に日本モードに切り替わり、「PayPayでお願いします」という音声を現地語で再生する機能を搭載。言葉の壁を越える仕組みで、店員との円滑なコミュニケーションを実現した。さらに、ビックカメラなど大手小売店と共同キャンペーンを展開し消費喚起を図っている。






