出所:共同通信イメージズ
組織の中の人間行動について理解が足りていないと、せっかく身に付けたビジネスの知識やスキルも生きてこない──。ビジネスにおける心理学的アプローチの重要性についてそう語るのは、2025年5月、著書『[新版]組織行動の考え方: 個人と組織と社会に元気を届ける実践知』(東洋経済新報社)を出版した立命館大学総合心理学部教授の髙橋潔氏だ。個人の価値観が多様化する中、組織で働く人の行動原理や行動特性についてどのように理解を深めればよいのか、同氏に話を聞いた。
心理学から組織を紐解く「組織行動論」
――著書『[新版]組織行動の考え方: 個人と組織と社会に元気を届ける実践知』では、経営学の科目の一つである「組織行動論」についてさまざまなテーマから解説しています。組織行動論とは、どのような学問分野なのでしょうか。
髙橋潔氏(以下敬称略) 組織行動論を簡単に説明すると「組織の中で行われるさまざまな人間の行動、あるいは集団の行動に着眼する、心理学をベースとした経営学の一領域」になります。
組織行動論をひもとくためには、そのベースとなる心理学を理解する必要があります。心理学は「基礎心理学」と「応用心理学」に大きく分けられ、認知心理学や発達心理学、性格心理学、社会心理学などは基礎心理学に該当します。
精神医学に心理学を応用し、心理学のイメージをつくり上げた「臨床心理学」という学問は皆さんもご存じでしょう。心理学の応用はそれに留まらず、学校教育に応用した「教育心理学」や、犯罪心理の分野に応用した「司法心理学」などが派生しています。
組織における人間の行動と集団行動にフォーカスした組織行動論(組織心理学)も、応用の心理学として生まれました。経営の実践に役立つ組織行動論(組織心理学)は、心理学のイメージとかけ離れているために馴染みがなかったかもしれませんが、日本以外の国では、雇用の機会も多く人気が高い分野です。
組織行動論は、モチベーションやリーダーシップ、職務満足、ワークストレス、キャリア開発、組織文化、組織開発を研究テーマとして掲げる学問です。ビジネススクールが台頭してきた1970年代から、組織とビジネスに対する心理学的なニーズを満たしてきました。
特に「モチベーション」「リーダーシップ」「キャリア」は、組織行動論における三大テーマと言えるでしょう。
![金井壽宏、高橋潔、服部泰宏『[新版]組織行動の考え方: 個人と組織と社会に元気を届ける実践知』(東洋経済新報社)](https://jbpress.ismcdn.jp/mwimgs/d/1/1200mw/img_d159e5a2a44350b5e3f37ddb410a6f23159587.jpg)





