三菱電機 常務執行役 CHRO(グローバル人財戦略、人事総務担当、人財統括部長)、広報担当の阿部恵成氏(撮影:冨田望)

 三菱電機がデジタル、AI時代の人材強化に取り組んでいる。大規模な事業構造改革の実現に向けて、グローバル規模で社員の意識改革とDX人材育成を進める。三菱電機はどのような組織に生まれ変わろうとしているのか。阿部恵成CHRO(最高人事責任者)に話を聞いた。

現状維持からの脱却

――三菱電機は人材の変革、組織風土改革に向けてさまざまな施策を進めています。その理由は何ですか。

阿部恵成氏(以下、敬称略) 人財マネジメントにおける当社の直近の課題は、新しいことに挑戦する積極的な社員を増やし、企業文化を変えることです。従来の「オペレーティブカンパニー」から、「イノベーティブカンパニー」へ変革しなければならないと、社長を筆頭にメッセージを発信しています。

 当社は設立から100年を超える長い歴史の中で、複数の強い事業を築き上げ、コングロマリット(多くの産業を抱える複合企業)として生き残ってきました。その一方で、事業本部制によって情報や人財のサイロ化が進み、部門間に壁ができてしまう課題もありました。

 また、特定の業務を効率良くオペレートすることへの比重が大きくなり、社員が新しいチャレンジに踏み出しにくい企業文化ができ上がっていました。ここにメスを入れて事業本部の壁を壊し、新たなイノベーションや価値を創造する必要があります。分断によって価値が十分に評価されないコングロマリット・ディスカウントの状況を克服し、逆に「コングロマリット・プレミアム」を生み出さなければいけません。

 チャレンジを推奨し、イノベーティブな組織になるためには、働く社員の意思が何より重要です。ただ、会社が社員に「イノベーティブになってください」と言うだけでは変わりません。それを実現する制度や仕組みが必要です。