写真提供:日刊工業新聞/共同通信イメージズ
社会課題の解決や持続可能な産業構造の構築が求められる中、材料開発やエネルギー技術といった“縁の下の力持ち”とも言える先端科学が、今大きな注目を集めている。『未来を見通すビジネス教養 日本のすごい先端科学技術』(橋本幸治著/かんき出版)から、内容の一部を抜粋・再編集。日本国内で着実に進む研究開発の最前線を紹介する。
フランスの大手航空会社エアバスと超電導モーター技術の共同研究を開始した東芝。実現は絶望的と思われていた航空機の電動化を、どう進めているのか?
脱炭素化に必要な桁違いの性能
『未来を見通すビジネス教養 日本のすごい先端科学技術』(かんき出版)
現在の航空機が搭載するジェットエンジンは、化石燃料を燃焼させることで莫大な推進力を得ています。しかし、地球温暖化対策が叫ばれる現代において、航空業界もまた、CO2排出量の大幅な削減という待ったなしの課題に直面しています。
そこで期待されるのが、電気エネルギーでプロペラやファンを回す「電動化」です。
しかし、航空機の電動化は自動車のそれとは比較にならないほど困難です。
数十トンもの機体を空へ持ち上げるには、とてつもないパワーを、しかも極めて軽量なシステムで実現しなくてはなりません。従来のモーターでは、必要なパワーを得ようとすると巨大かつ重くなりすぎてしまい、到底飛行機を飛ばすことはできませんでした。技術者たちは、「10分の1程度の小型・軽量化が必要」という、絶望的とも思える壁に直面していたのです。
この不可能を可能にする鍵こそが 「超電導」です。
東芝は、モーターのコイルに超電導材料を採用したのです。超電導状態では電気抵抗がゼロになるため、コイルに大量の電流を流しても発熱によるエネルギー損失がありません。これにより、従来の銅線コイルを用いたモーターに比べ、圧倒的に強力な磁力を、はるかに少ない巻数で、そして驚くほど小さなコイルで発生させることが可能になります。
東芝が開発した超電導モーターの試作機(画像:株式会社東芝より)
結果として、モーター全体を劇的に小型・軽量化しつつ、桁違いの出力を叩き出すことができるのです。
そんな理想的なモーターを本当に作れるのでしょうか。






