写真提供:©Rodrigo Reyes Marin/ZUMA Press Wire/共同通信イメージズ
社会課題の解決や持続可能な産業構造の構築が求められる中、材料開発やエネルギー技術といった“縁の下の力持ち”とも言える先端科学が、今大きな注目を集めている。『未来を見通すビジネス教養 日本のすごい先端科学技術』(橋本幸治著/かんき出版)から、内容の一部を抜粋・再編集。日本国内で着実に進む研究開発の最前線を紹介する。
印刷機器メーカーとして知られるキヤノンは、なぜ異分野であるペロブスカイト太陽電池向けの素材を開発できたのか?
日本の希望になる4つの理由
『未来を見通すビジネス教養 日本のすごい先端科学技術』(かんき出版)
ペロブスカイト太陽電池は、シリコン型にはない、日本にとって特に希望の光となる数々のメリットがあります。主な注目点は次の通りです。
■「日本発」の 技術であること
このペロブスカイト太陽電池の基本原理は、実は日本で生まれました。
2009年に桐蔭(とういん)横浜大学の宮坂力(みやさかつとむ)教授らによって世界で初めて報告された新しい技術なのです。「ペロブスカイト」の名は、灰チタン石という鉱物の特殊な結晶構造に由来しています。
ペロブスカイト構造自体は、古くから、圧力(力学的エネルギー)を電気エネルギーに変換する材料である「圧電材料」として、ガスコンロの自動点火装置などに活用されてきました。宮坂教授らはその「圧電」ではなく「光電」の可能性を切り拓いたのです。
報告当初は数%程度だった発電効率も、今では世界中の熾烈な開発競争の結果、25%程度と、実用化されているシリコン太陽電池に匹敵する水準にまで飛躍的に向上しています。







