日立製作所フェロー、ハピネスプラネットCEO 矢野和男氏(撮影:冨田望)日立製作所フェロー、ハピネスプラネットCEO 矢野和男氏(撮影:冨田望)

 組織の中の人間関係に「三角形」と「V字」のどちらが多いのか、この違いが人の幸福感や生産性、創造性を左右する――。企業の組織改革のポイントについてこう語るのは、2025年7月、著書『トリニティ組織: 人が幸せになり、生産性が上がる「三角形の法則」』(草思社)を出版した、日立製作所フェロー、ハピネスプラネットCEOの矢野和男氏だ。三角形とV字とはどのような人間関係を指し、その違いはどのように組織と個人に影響を及ぼすのか、同氏に話を聞いた。

組織の人間関係にある「三角形」と「V字」

――著書『トリニティ組織 人が幸せになり、生産性が上がる「三角形の法則」』では、人を幸せで生産的にする人間関係の形として、人と人の「三角形のつながり」の重要性を述べています。組織における三角形のつながりとは、どのような関係を指すのでしょうか。

矢野和男氏(以下敬称略) 組織の中の人間関係には「会ったことがある」「たまにあいさつをする程度」といった浅い関係性の人もいれば、「週に何度も話をする」「毎日会話する」といった深く関わる人もいるはずです。

 例えば、Aさんが日常的に頻繁に会話をする人の中から2人(Bさん、Cさん)を選んだとき、このBさんとCさんの間にも会話があれば「三角形」が成立します。一方、AさんとBさん、AさんとCさんは交流があっても、BさんとCさんの間に会話がなければアルファベットの「V字」の関係といえます。

 このように、「三角形のつながりがある状態」とは、あなたを中心とした3人の人間関係を考えたとき、「あなた以外の2人が、互いに直接的な交流や会話を持っている関係性」を指します。人の周りには複数のつながりがありますが、自分とつながっている2人に着目すると、必ずこの三角形がV字か、どちらかの構造が該当します。

 そして、組織の人間関係に「三角形」が多いのか「V字」が多いのか、この小さな違いが、実は人の幸福感や生産性、創造性を左右する大きな要因となっているのです。私たちはこれを独自開発したセンサーを使い、21年間にわたる1兆件のデータ解析から導き出しました。