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 資本コストや株価を意識した経営が今まで以上に求められる中、米国の経営管理手法を参考にしたFP&A(Financial Planning & Analysis)を導入する日本企業が増えている――。このように話すのは、2025年6月に著書『実践 日本版FP&A』を出版したストラットコンサルティング代表取締役の池側千絵氏だ。FP&Aは企業内でどのような役割を果たすのか、FP&A組織を立ち上げた企業ではどのように業務を進めているのか、池側氏に話を聞いた。

欧米では事業部門にも「CFO配下の人材」を配置する

――著書『実践 日本版FP&A』では、近年日本企業にも増えつつあるFP&A(Financial Planning & Analysis)について解説しています。欧米企業では1990年代から経理人材がFP&A機能を果たすようになったとのことですが、主にどのような役割を担っているのでしょうか。

池側千絵 (以下敬称略) FP&Aは、企業内で経営管理・管理会計に携わる人材、組織、業務を指し、欧米の先進企業では一般的な職種です。

 かつては欧米企業でも、財務や会計を扱うファイナンス担当者の主な仕事は決算と財務報告でした。それ以外の業務は、事業部門からサポートを依頼されたときだけ必要に応じて対応する、という形が主流だったようです。

 しかし1990年代以降、米国企業ではコーポレート部門のみならず、事業部門にもファイナンスの専門人材を配置し、事業のビジネスパートナーとして仕事をする形に変化していきました。

 現在、欧米の先進企業では、CFOが経営管理、管理会計業務全般を担い、コーポレート部門に加えて事業部門にもCFOの配下である「事業部門CFO」や「FP&Aビジネスパートナー」といった職種を配置し、事業の業績目標や投資の意思決定を支援しています。

 このように、FP&Aは事業の状況をリアルタイムに把握し、迅速な判断や意思決定が求められる場面で経営者や事業責任者と共に動く働き方へと変化していきました。