グランポレールの現在
今回試飲したこれらのワインはグランポレールのラインナップのなかではもっとも高級、少量生産の「シングルヴィンヤードシリーズ」に属する。シングルヴィンヤードは単一畑と訳されるワイン用語で、安曇野池田ヴィンヤードであれば、安曇野池田ヴィンヤード内で栽培されたブドウのみを使うワインということになる。
このほか、必ずしも畑を限定しない「キャクターシリーズ」、そして、日本のブドウで造るという以外の制約がない「ブレンドシリーズ」の3段階でグランポレールのポートフォリオは形成されている。
生産体制は現在、改編期というべき状況のため若干複雑化していて、自社所有のブドウ畑が安曇野池田ヴィンヤードのほかに、北海道北斗ヴィンヤードと長野古里ぶどう園の合計3カ所。このうち、長野古里ぶどう園は2025年に閉園しているので、今後、北海道1、長野1の自社畑+契約畑という体制になる。また、かつては山梨県・勝沼にも醸造所があったのだけれど、今年から岡山に集約されている。
訪問した8月の終わりごろには、そろそろ一部のブドウの収穫が始まるため安曇野池田ヴィンヤードにはブドウ輸送用の通い箱が用意されていた。岡山までは24時間以内に陸送できるとのこと
この体制の変化は市場環境と自然環境にあわせてビジネスを合理化した結果だけれど、生産量や技術に関しては従来と見劣りすることはなく、消費者側で不安を抱く必要はなさそうだ。栽培担当者と醸造担当者は、それこそ畑から携帯電話でやりとりしながらリアルタイムでブドウの状況を把握するくらいの緊密な連携をとっているし、ブドウの輸送システムも練り込まれている。
繰り返しになるけれど、グランポレールの魅力は、品種や土地の個性を奇をてらわずストレートに表現しようとする誠実さにある。粗雑、過剰、不均衡をグランポレールが嫌うのはこれまで何度も体験してきているけれど、今回も変わっていないことが確認できた。自然を敬い、自然に寄り添いながら生み出されるワインは品がよく、飲んでほっとするし、しみじみと日本の美意識を感じられる。
安曇野池田、余市、北斗は世界に通用する産地。どんどん、日本の自然とものづくりのスゴさ、感動を世界に発信していってもらいたい。そして、まだグランポレールをきちんと体験したことのない日本のワイン好きには、ぜひ味わってもらいたい。きっと誇らしい気持ちになれるから。
