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統合報告書は、企業の財務情報と非財務情報を統合した“企業の見取り図”とも言える重要資料だ。本連載では、株式アナリスト出身の椎名則夫氏が、投資家視点から注目すべき統合報告書を厳選して紹介する。
「ROIC経営の先駆者」とされたオムロンが、直近では資本コストを下回る水準に低迷している。高ROICを実現した仕組みはなぜ揺らいだのか、その要因を探る。
オムロンのROIC低迷の要因を分析する
オムロンは2013年度にROIC(投下資本利益率)経営を導入し、「ROIC逆ツリー」と「ポートフォリオマネジメント」を両輪として高水準のROICを実現した(前回参照)。しかし、直近のROICは大幅に低下している。
2023年3月期には10.4%であったROICは、2024年3月期には1.0%、2025年3月期には1.8%まで低迷し、同社の資本コストを下回る状況が続いている。今回は、近年のROIC低下の要因を分析し、オムロンのROIC経営の枠組みにどのような課題があるのかを検証する。さらに、現在の経営戦略とROICの位置付けを整理し、そこから得られる示唆を考えたい。
オムロンのROICの推移をその構成要素であるROS(売上高利益率)と投下資本回転率、さらにその内訳に分解して示したのが次の表である。
オムロンのROIC低迷は、ROS(売上高利益率)と投下資本回転率の二重の低下が原因だ。売り上げが低迷し、収益性が低下する一方で、投下資本が増加していることが分かる。具体的な要因は以下の2点である。







