三井物産では、収益力の強化と新規事業の創出のため、全社員のDX力を高める「総DX戦力化」を進めている。「総DX戦力化」という言葉が生まれた背景と、全社員のDX力を高める人材戦略の取り組みについて、同社デジタル総合戦略部部長補佐の鎌谷栄志氏に聞いた。

※本稿は、Japan Innovation Review主催の「第10回 DX人材フォーラム」における「特別講演:三井物産の「総DX戦力化」/鎌谷栄志氏」(2025年6月に配信)をもとに制作しています。

DX総合戦略の1つの柱としてのDX人材戦略

 三井物産のDXの取り組みの基本戦略を示す「DX総合戦略」は、3つの柱で成り立っています。1つ目は、DX事業を推進する「DX事業戦略」、2つ目はデータドリブンで経営を高度化する「DD経営戦略」、3つ目は全社員の総DX戦力化を目指す「DX人材戦略」です。

 DX人材戦略については、DX総合戦略を2020年に策定した当初から、三井物産のDXをつかさどるデジタル総合戦略部と人材戦略を担う人事総務部が共同で施策を開始し、維持、運営しており、この協働での取り組みが効果を発揮している要因のひとつだと思います。
 
 DX人材戦略を発表した2020年当時、当社が打ち出したDX人材タイプのコンセプトが、下図となります。

 DXを推進するためには「ビジネス」と「デジタル」に精通する人材が必要となります。

 1つ目の人材として、「ビジネス人材」があります。商社パーソンは全員、ビジネスのプロフェッショナルとし、まずは、ビジネス人材として、これを「a人材」と定義しました。

 次に、DXを行うには、デジタル力の高い人材も必要です。そこで、デジタルの技術レベルが高いものの、ビジネスにはそれほど詳しくない人材を、「DX技術人材」(c人材)と定義しました。

 そして、ビジネスとデジタルの双方に専門性が高い人材を、「DXビジネス人材」(b人材)としています。当社ではこのDXビジネス人材、b人材を、2020年からの3年間で100人養成すべく、取り組みを始めました。