出所:共同通信イメージズ出所:共同通信イメージズ

 生成AIの普及が社会にさまざまな変化をもたらす中、次なる注目分野になりつつあるのが「AGI」(汎用人工知能)だ。AGIにはどのような能力が期待され、私たちの生活にどんなインパクトをもたらすのか――。2025年4月に著書『スーパーAIが人間を超える日 汎用人工知能AGI時代の生き方』を出版したサイエンス作家・ZEN大学教授の竹内薫氏に、AIとAGIの違いや実現のポイント、AGIが誕生する時代に「人間に求められる能力」について聞いた。

生成AIが生んだのは、ブームを超えた「技術の臨界点」

――著書『スーパーAIが人間を超える日』では、AGI(汎用人工知能)が人々の暮らしや社会をどのように変化させるのかについて解説しています。今回、どのような理由からAGIをテーマに選んだのでしょうか。

竹内薫(以下敬称略) AIはすでに私たちの暮らしのさまざまな場面に浸透しつつあります。先行して登場した将棋や囲碁のAIに続き、画像生成AI、そして言語生成AIが次々に登場し、社会的な関心が一気に高まりました。特に言語生成AIの出現が、ブームを超えた「技術の臨界点」と言えるインパクトをもたらしました。

 このような背景のもと、生成AIを開発している企業の多くが次なる目標として掲げているのがAGIの実現です。こうした動向を踏まえ、AGIをテーマに据えた著書を執筆するに至りました。

――生成AIの次に目指す姿がAGIというわけですね。

竹内 その通りです。現在の生成AIは、すでに多様な用途に応用されています。例えば、学校の時間割作成や契約書の自動作成といった事務業務、あるいは高精度な多言語翻訳など、さまざまな分野で実用化が進んでいます。また、プロンプトによって文体を「ビジネス文書風」「日記風」「演説風」などに自在に変えることも可能です。

 かつて弱点とされていた数学の処理能力についても、ChatGPTのo1モデル、そして2025年に登場したo3モデルによって着実に向上してきました。従来は困難だった作業もこなせるようになり、AIの活用領域はさらに広がっています。

 加えて、AIが現実世界に直接介入する領域、例えば旅行手配などにも活用されており、生活全体をAIが設計・支援する時代が近づいています。そうした社会の変化の中で、AGIはビジネスのあり方そのものを大きく変える存在として期待されており、各企業が激しい開発競争を繰り広げているのが現状です。