出所:共同通信イメージズ
地方の一中小企業から売上高5000億円規模の世界的LEDメーカーへと成長した日亜化学工業。同社が飛躍的な成長を遂げた要因の一つに「投資判断や意思決定のスピードの速さ」を挙げるのが、2025年4月に著書『技術者天国 日亜化学工業、知られざる開発経営』を出版した日経クロステック編集委員の近岡裕氏だ。「年間予算を設けず、A4サイズの紙1枚で数十億円の投資が決まる」という同社の知られざる経営スタイルについて、近岡氏に話を聞いた。
誰かに命令されたところで「良い発明などできない」
──著書『技術者天国 日亜化学工業、知られざる開発経営』では、日亜化学工業が過去30年で売上高5000億円規模の世界的LEDメーカーへと急成長を遂げた理由として「付加価値の高いものづくり」を挙げています。同社が付加価値の高い製品開発に成功している背景には、どのような経営方針が影響しているのでしょうか。
近岡裕氏(以下敬称略) 独自の考え方に基づいた「開発経営」の仕組みが影響していると考えています。
日亜化学工業では、開発者が自ら取り組みたいと願う研究や開発テーマに取り組ませ、そのために必要な資金や設備、人員を最大限会社が手当てします。その代わり、目標は高く掲げて挑戦を促します。目標が高ければ失敗は多くなりますが、失敗したときには一切、責めません。むしろ、失敗したことで駄目だと分かったことを「新たな知見」と捉えて、再挑戦の背中を押します。このような開発経営が日亜化学のユニークな点であり、確かな強みです。
技術者のモチベーションを最も大切にする日亜化学工業のこの開発経営は、現会長の小川英治氏の考えが色濃く反映されています。技術者出身である同氏は「技術者というのは、自分のやりたいことをすることによって、優れた発明ができるものだ。誰かに命令されて実験などをしたところで、良い発明などできない」と述べています。
例えば、半導体レーザーの開発は1人の技術者が忘年会で主任研究員に「レーザーを開発したいので、やらせてください」と直訴したところからスタートしました。当時、次期開発は高輝度な緑色LEDと決まっていました。そのため主任研究員から却下されたのですが、それでも食い下がり半導体レーザーの開発を社内で提案したのです。







