出所:共同通信イメージズ
部下のモチベーションやエンゲージメントが上がらない――。そうした日本企業の管理職が抱える悩みについて、「本来果たすべき説明責任から逃げていることが原因ではないか」と指摘するのは、2025年2月に著書『世界標準のフィードバック 部下の「本気」を引き出す外資流マネジメントの教科書』を出版した、We Are The People代表取締役の安田雅彦氏だ。グッチグループジャパン、ジョンソン・エンド・ジョンソン、アストラゼネカ、ラッシュジャパンといった外資系企業で人事の要職に就いてきた同氏に、部下と信頼関係を築き、現場の士気やエンゲージメントを高めるための方法論について聞いた。
「サプライズ退職」は上司の責任
──著書では、安田さんがバス・ヘアケア用品の製造販売で知られるラッシュジャパンの人事部長(ヘッド・オブ・ピープル)を務めていた頃、目的に応じて2パターンの1on1ミーティングを行っていたことに触れています。どのような形で1on1ミーティングを実施していたのでしょうか。
安田雅彦氏(以下敬称略) 当時、直属の部下との「隔週30分」「四半期に1回、60分」という2種類の1on1ミーティングを行っていました。
隔週30分、月2回程度行われる1on1は「キャッチアップ」と呼んでおり、「How are you ?」から始まるカジュアルな会話をしながら、部下が今、心身ともにどういうコンディションにあるかを確認します。
ここでは「最近どう?どんな感じ?」から始まるプライベートについての話題も交えた雑談をしながら、「そういえばイギリスの担当者から連絡来た?」「あのメールに返信した?」などと小さなタスクについてもチェックし、部下のモチベーションやエンゲージメントの状態を探ります。
この1on1によるキャッチアップは必ず定期的な実施が必要です。部下と日常的に雑談していれば、ハッピーな状態かどうか、やる気があるか、悩みを抱えているかどうかはだいたい分かります。上司と部下との関係性の維持にも役立ちます。
だからこそ「サプライズ退職」のような事態が起これば、それは上司の負けです。それは日常的なフィードバックができていなかったことを意味するからです。
もう1つの1on1、四半期や半期に1回、60分ほどかけて行う業績評価(パフォーマンスレビュー)も定期的に行います。部下が組織から求められる目標に対してどれくらい進捗しているのかを確認し、「求められるパフォーマンスを発揮するためにはどのようにすればいいか」をフィードバックします。進捗が滞っているのならば、その原因は何なのか、うまくいっているのならば何が幸いしているのかを見極め、部下の成長機会につなげる会話をします。







