「ノイエ・クラッセX」と命名されたコンセプトモデルの量産型が新型iX3として登場した。BMWのラインナップの中では販売台数で屋台骨となるプロダクトでもある
現代のノイエ・クラッセとして
ミュンヘンで開催されているドイツ最大級のモーターショーであるIAAで、BMWはBEVの新型iX3をワールドプレミアしました。このモデルは単なるiX3のフルモデルチェンジという枠に留まらず、将来的なBMWの方向性を示唆する上でとても重要なプロダクトでもあります。
BMWはすでに「ノイエ・クラッセ(=新しいクラス)」と呼ぶコンセプトモデルを発表しています。セダンとSUVの2タイプがあって、いずれもまったく新しいプラットフォーム/パワートレイン/内外装デザインを採用しており、今後登場するであろうBMWのニューモデルは基本的にこれらのコンセプトモデルに準じた仕様になると言われています。セダンは来年にも登場する新型3シリーズと噂され、SUVがこのiX3ということになります。実はIAAに先駆けて、一部メディアに向けたiX3のワークショップが開催され、そこでいち早く新型iX3に触れる機会を得ました。
2024年3月にBMWが公開した画像。手前がヴィジョン・ノイエ・クラッセXと呼ばれるコンセプトモデル
iX3のボディサイズは全長4782mm、全幅1895mm、全高1635mm、ホイールベース2897mm。BEVなので空力性能を考慮したエクステリアデザインは、これまでよりもシンプルですっきりとした造形が特徴で、Cd値は0.24に達しています。細い縦長のキドニー・グリルは、1960年代にまさしく「ノイエ・クラッセ」の愛称で親しまれたBMW1500/1800のオマージュでもあります。
BMW 1500は1961年9月のフランクフルト・ショーで発表。BMWの礎を築いたヒット作
iX3 50 xDriveはその車名が示すように4WDの駆動形式で、前後にモーターを配置しています。システムパワースペックは最高出力470ps、最大トルク645Nmで、最高速は210km/hとのこと。前後モーターはいずれも効率のよい新しいモーターで、パワートレインだけでエネルギーロスを40%、重量を10%、製造コストを20%カットすることに成功しています。108kWhの容量を持つ駆動用バッテリーは円筒型バッテリーセルを採用、セル当たりのエネルギー密度は20%、充電速度は30%それぞれ向上したそうです。そして800Vの電気アーキテクチュアでこれらを制御することにより、最大航続距離は800kmと公表されています。
現行のBMW各車よりもクリーンなイメージの強いエクステリアデザイン。最大航続距離は800km、充電は400kWまで対応可能。充電器によっては10分で約350km分をチャージできる。V2L/V2H/ V2Gにも対応するそうだ
すべてが刷新され、今までで一番BMWらしい
BMWのこだわりのひとつでもある「走り」に関しては、「スーパーブレイン」が威力を発揮するようです。iX3はドライビングダイナミクス/自動運転/インフォテイメント/ベーシック&コンフォートの要件についてそれぞれ専用のコンピュータを搭載、これらをまとめて「スーパーブレイン」と呼んでいます。中でもドライビングダイナミクスは「Heart of Joy」のコンセプトのもと、パワートレイン/ブレーキ/エネルギー回生/ステアリングなどについて、従来比で約10倍の情報処理速度で演算しながら最適なパラメーターを導き出し、運転しているドライバーだけでなく全乗員がBMWらしい乗り味を実感できるようセッティングを施したそうです。

そしておそらく、新型iX3でもっとも注目されるのが「パノラミックiDrive」でしょう。これにより、室内はこれまでのBMWと異なるまったく新しい景色に生まれ変わりました。その象徴的機構が「パノラミックビジョン」です。フロントガラスの下部にはナノコーティングされた黒色印刷が施され、そこへさまざまな情報が投影される仕組みです。
今後のBMWのニューモデルにも順次採用されることになる、「パノラミックiDrive」は、これまでのBMWの室内の雰囲気を一新するもの。視認性や使い勝手も悪くない
ドライバーの目の前の部分は、運転に必要な最低限の情報が常に表示されますが、センターから助手席へかけての部分については、好みのコンテンツを選んで投影することが可能になっています。そのやり方もいたって簡単で、センターディスプレイで選んだアイコンをドラッグ&ドロップするような操作のみ。スマートフォンを操るように扱うことができます。見た目のインパクトがかなりあるのはもちろんですが、実際に運転席に座ってみると、視認性や操作性など機能にも根ざした機構であることがわかりました。

BMW AG取締役会会長のオリバー・ツィプセ氏は「ノイエ・クラッセは、未来を見据えた当社史上最も大規模なプロジェクトであり、テクノロジー、ドライビング・エクスペリエンス、デザインにおける大きな飛躍として位置付けられます。iX3は、ノイエ・クラッセとして量産される初めてのモデルとなりますが、すべてが刷新されているにもかかわらず、今までで一番BMWらしいクルマです」と話していました。
室内には余裕ある空間が確保されており、ラゲッジルーム容量は520-1750L。だだしこれはリヤのみの数値で、フロント部にもさらに58Lのスペースが設けられている
いまから試乗するのが楽しみな新型iX3は、ハンガリーにあるBMWの工場が生産を担当し、2025年秋以降に欧州での発売が予定されています。
