ミニのJCW仕様がすべて出揃った。日本での販売も始まっていて、ミニJCWは536万円、ミニJCWコンバーチブルは585万円、ミニJCW Eは616万円、ミニJCWエースマン Eは641万円。

ジョン・クーパー

 昨年、フルモデルチェンジを受けたミニにJCW(ジョン・クーパー・ワークス)仕様が追加されました。JCWとは、BMWならM、メルセデス・ベンツならAMGのように、ノーマルのモデルのパワートレインやサスペンションに改良を施して、スポーティな仕立てとしたモデルです。ただ、MやAMGのように有り余るパワーを炸裂するようなタイプではなく、ミニ本来の運転する楽しさをさらに引き出す乗り味になっています。

ミニ JCW E ボディカラーはミッドナイト ブラックII

 ミニは現行モデルから、3ドア/5ドア/コンバーチブルの正式車名が“ミニ”から“ミニ・クーパー”へ変更されています。「これまでもミニ・クーパーだったのでは?」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。従来型まではノーマルがミニ、少しスポーティな仕様がミニ・クーパーと呼ばれていました。ところが日本のみならず、世界的にもミニといったらミニ・クーパーが正式な車名だといつの間にか認知されるようになっていたそうです。ミニはノーマルでもスポーティな乗り味だし、「そこまで浸透しているなら」というのが車名変更の理由だそうです。ちなみに、ミニ・クーパーの“クーパー”はJCWの“クーパー”と同じで、1960年代にミニを改良したマシンでモンテカルロラリーを3度も制するという偉業を成し遂げたエンジニアであるジョン・クーパーの名前に由来しています。

ミニ JCW ボディカラーはアイシー サンシャイン ブルー

出力の上乗せは相変わらず控えめ

 ミニにはミニ・クーパー(3ドア/5ドア/コンバーチブル)、ミニ・カントリーマン、ミニ・エースマンの3種類がラインナップされていますが、そのすべてにJCW仕様が加わりました。先行してミニJCWカントリーマンALL4は発表されていたので、今回イギリスで開催されたJCWの国際試乗会に用意されていたのは、ミニJCW(3ドア)、ミニJCWコンバーチブル、ミニJCW E、ミニJCWエースマン Eの4台です。

ミニ JCW E ボディカラーはブレイジング ブルー

 ミニJCWとミニJCWコンバーチブルはノーマルと同型の2Lの直列4気筒ターボエンジンを搭載していますが、エンジン制御のソフトウエアを改良することでノーマルよりもパワーアップを果たし、ミニクーパーSの204ps/300Nmに対してミニJCW/ミニJCWコンバーチブルともに231ps/380Nmを発生します。

ミニ  JCW
前後のバンパーやホイールなどはJCW専用の意匠となり、3ドアにはリヤウイングが装着される。ボンネットのストライプもJCWのみに採用される

 最高出力も最大トルクも、数値としては大きな上乗せではありませんが、そもそもこの2台の車両重量は約1.4トンしかないので、これだけでも加速感の違いは十分体感できます。ミニJCW EとミニJCWエースマン EはどちらもBEV(電気自動車)で、同じモーターを使うノーマルの218ps/330Nmに対して258ps/350Nmを発生します。

ミニ JCW エースマン E ボディカラーはチリレッド
BEVのミニJCW Eの航続距離は421km、ミニJCWエースマン Eの航続距離は403kmと公表されている

ノーマルモデルと何が違うのか?

 JCWとノーマルのミニを乗り比べて、その差がもっとも顕著に現れているのは乗り心地と操縦性です。JCWではサスペンションを構成するばねとダンパーに加え、前後のスタビライザーやパワーステアリングが専用のセッティングになっているからです。

ステアリングに装備されるソフトパドルは「ブースト」モードのスイッチも兼ねている。左側のパドルを手前に引き続けると10秒間だけ約27psが上乗せされる仕組み

 乗り心地はひと言で表すなら少し硬め。乗り心地を評するときに「硬い」という表現が用いられますが、これにはポジティブな場合とネガティブな場合があります。スポーツタイプのモデルの「硬い」は、サスペンションに手を入れることでボディの動きを小さくしてクルマを曲がりやすくしています。その結果、乗り心地が硬くなる傾向にあるわけですが、操縦性の向上と相殺という理解もできます。いっぽうで、スポーツタイプでもないのに乗り心地が硬い場合は、ボディ剛性やサスペンションのセッティングに問題があったります。ミニのJCWはもちろん前者で、ノーマルよりもさらに気持ちのいいハンドリング特性を備えていて、曲がるというよりも横に動くような感じで、安定した旋回ができるようになっています。

JCWでもモデルごとに解釈は異なる

 ミニの乗り味については“ゴーカートフィール”と言われることが多いですが、今回の4台の中でもっともそれに近いのはBEVのミニJCW Eでした。モーターはトルクの立ち上がりが速く、そのリズムにクイックなハンドリングが絶妙にマッチしていたからです。

インテリアは基本的にノーマルを踏襲するものの、随所にJCW専用の施しがされている。シートはホールド性に優れたスポーツタイプが装着されている

 ガソリンエンジンのミニJCWも似たような感じで、もれなくスポーティなエンジン音もついてきます。ミニJCWカブリオレはボディ剛性がやや落ちるものの、全体の乗り味は前述の2台よりもいい意味でユルく、オープンにしてゆったり走るには丁度いい塩梅でした。

 エースマンはもっとも乗り心地がよくマイルドな印象で、これはファミリーユースを想定してあえてそういったセッティングにしているとのこと。“JCW”とは言っても、モデルによって微妙にセッティングを変えるという、エンジニアのこだわりがうかがえました。