出所:Adobe Stock
DXに取り組むものの、導入されたシステムを現場で生かし切れていない、と感じる企業は少なくないだろう。その対策として「ゲームが持つ『ついやりたくなる』要素を活用すれば、解決に近づけることができる」と語るのは、2025年4月に著書『ゲームフルデザイン 「やりたくなる」を生み出すゲーミフィケーションの進化』を出版したセガ エックスディー 取締役 執行役員COO の伊藤真人氏だ。ゲームが持つ要素を課題解決につなげるための観点やフレームワーク、ゲームの本質を捉えた施策を打ち出す「くら寿司の実例」について、同氏に話を聞いた。
ゲームの力を「ゲーム以外の産業の課題解決」に活用する
──著書『ゲームフルデザイン 「やりたくなる」を生み出すゲーミフィケーションの進化』では、ゲームの要素を活用した課題解決の手法について解説しています。そもそもゲームフルデザインとはどのような概念なのでしょうか。
伊藤真人氏(以下敬称略) ゲームは衣食住に不可欠なものではないため、ゲームをしなくても生活に困ることはありません。しかし、ゲームには「ついやりたくなる仕掛け」が詰まっており、「楽しいから」という内発的な動機で没頭してしまうものです。
ゲームフルデザインは、そんなゲームの持つ「人を夢中にさせる力」をゲーム以外の産業の課題解決の手段として活用するアプローチです。ランキングやポイントといった方法論にとどまらず、人間の体験や行動に着目し、人間の本質的な理解を踏まえた上で「ゲームの要素や技術」をゲーム以外の分野に応用していきます。
──具体的にはどのような場面での活用が考えられるのでしょうか。
伊藤 活用例としては、企業によるDXの取り組みが分かりやすいと思います。コロナ禍において、多くの企業がDXを推進して企業変革を進めてきました。
しかし、社内に導入されたITシステムのユーザーである従業員に目を向けてみると、その変革はうまくいったと言えるでしょうか。会社から与えられたシステムを使うことが「ゲームのように楽しい」「没頭している」と感じる人はほとんどいないと思います。「会社や上司から指示されたから」という理由で、仕方なく与えられたシステムを使っている従業員の方が大半でしょう。
結果として日々の業務が「やっつけ仕事」になってしまい、現場の有用な情報がなかなか集まらない、そんな状況に直面する企業をたくさん見てきました。
そこで、会社で使うシステムにゲームフルデザインが活用されたらどうでしょうか。誰に強制されたわけでもないのに、「入力することが楽しい」と従業員の方が前向きかつ主体的になれれば、より質の高いデータが蓄積されるようになるはずです。







