出所:共同通信イメージズ
世界情勢が激変する今、企業にとって「地政学リスク」への対応が重要なテーマになりつつある。地政学リスクへの対応策として「インテリジェンス体制を社内に構築する企業が日本でも出てきている」と語るのは、2025年4月に著書『企業インテリジェンス 組織を導く戦略的思考法』(講談社)を出版したFortis Intelligence Advisory代表取締役の稲村悠氏だ。企業に必要なインテリジェンス体制とはどのようなもので、具体的にどのように取り組むべきなのか、稲村氏に話を聞いた。
CIAやNSAで用いられてきたインテリジェンスの考え方
──著書『企業インテリジェンス 組織を導く戦略的思考法』では、組織のトップ層が戦略立案や課題解決に用いる「インテリジェンス・サイクル」について解説しています。そもそも企業にとってのインテリジェンスとは、どのようなものなのでしょうか。
稲村悠氏(以下敬称略) 私はインテリジェンスについて「示唆と打ち手を導く知」と定義しています。
例えば、「ロシアがウクライナに侵攻する可能性が高まっている」ということを伝えたニュースは、一般的な視聴者にとっては単なる情報にすぎません。しかし、関連地域に事業展開していたり、サプライチェーンを持っていたりする企業にとっては大きな脅威になりえます。
リスク管理などを担当する企業のインテリジェンス部門は、こうした情報が自社にどのような影響を与えるのかを急いで分析します。その結果、自社がすぐに対応すべき行動を示す「示唆」と「打ち手」こそがインテリジェンスです。
ただし、基本的には「兆候」を得た段階、更には兆候を得る以前から、このようなリスクはリスクシナリオとして分析されていることが望ましいですが、中々難しいのが実情です。
日本企業でも経済安全保障などに対応する部署が存在するものの、得た情報をインテリジェンスに昇華させて正しく扱っている企業は少ないようです。その背景には、「インテリジェンス・サイクル」が十分に知られていないことが影響していると考えています。
──インテリジェンス・サイクルとは、どのようなものですか。
稲村 インテリジェンス・サイクルとは、戦略の立案や課題解決のために、組織のトップ層が正しく課題設定をした上で情報要求をし、課題に対する答えを明らかにするプロセスを指します。
これはCIAやNSAといったアメリカの情報機関で広く用いられてきたもので、軍事戦略や諜報活動における実務の中から生まれたモデルです。







