出所:共同通信イメージズ
今や国内有数の事業規模となったYahoo!ショッピング。しかし、2012年時点では国内EC市場で先行する楽天とアマゾンに大きく後れを取っていた。そこで事業の再生を任されたのが、後にヤフーCEOを務めることになる小澤隆生氏(現BoostCapital代表取締役)だ。同氏はどのような戦略を用いて、事業を成功に導いたのか──。2025年2月に著書『小澤隆生 凡人の事業論 天才じゃない僕らが成功するためにやるべき驚くほどシンプルなこと』を出版したビジネスノンフィクション作家・編集者の蛯谷敏氏に、小澤氏の成功メソッドや事業戦略論について話を聞いた。
「ワクワクするような言葉」が多くの人を動かす
――著書『小澤隆生 凡人の事業論』では、電子決済「PayPay」を事業立ち上げた際の舞台裏について解説しています。小澤氏はいかにして組織を動かしたのでしょうか。
蛯谷敏氏(以下敬称略) 小澤氏は、組織が大きくなればなるほど、企画のコンセプトである「打ち出し角度」をメンバー全員に理解してもらう必要があると言います。新たなビジネスでは360度、どこにでも走り出せるからこそ「どこに向かって走るのか」を分かりやすく示す必要があるわけです。そこで求められるのが、メンバーを動かす言語化能力です。
PayPayの場合、目指すべきゴールを「現金をなくそう」というシンプルな言葉で表現していました。現金をなくすためには「決済できる場所を日本で一番多くする」ことが必要です。このように、一言で分かりやすく伝わるような言葉の作り方が大事だと思います。
特に数千人、数万人規模の組織になると、直接面識のない人もたくさんいます。その人たちに同じ方向を向いてもらうためには、伝えたいことを端的にメッセージ化する能力が求められます。
――「100万店舗に導入しよう」といった具体的な目標は掲げなかったのですね。
蛯谷 もちろん数値化した目標も大事だと思います。しかし「100万店舗に導入する」「取扱高10兆円を目指す」と伝えることで、現場にいるメンバーのモチベーションをどれだけ高めることができるでしょうか。むしろ急に高い数値目標を掲げられると現場は困惑し、抵抗も生まれると小澤氏は言います。
それよりも「小銭をなくして世界を変えよう」といったワクワクするような言葉の方が、多くの方の心を動かすことができます。現場社員を巻き込むためには、「いかにして希望を持ってもらうか」を考えることが大事です。







