統合報告書を作成するためのガイドラインとして、経済産業省の「価値協創ガイダンス2.0」を採用する企業が増加している
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 アクティビストの提案が目立った今年の株主総会。経営者はその声を改革のヒントとして生かすべきだ。中でも注目すべきは「知財」と「価格決定力」である。コーポレートガバナンス・コードで情報開示が求められて久しいが、形式的な対応にとどまる企業も多い。

 シティグループ証券などで長年セルサイドアナリストを務め、一橋大学CFO教育研究センターで「投資家との対話」をテーマに講義する松島憲之氏が、インフレ下で持続的成長を実現するための知財への投資と戦略について解説する。

増加するアクティビストの提案を生かそう

 3月決算の会社の株主総会が終わったが、アクティビストが企業に対して積極的にいろいろな提案をしたという報道が目立った。アクティビストの提案そのものが受け入れられるケースは少なかったが、業績不振の会社や問題を起こした企業の経営者に対して、強く改革を訴える姿勢が多く見られた。経営者もアクティビストの有用な意見を改革のために参考すべきである。

 その中で目立ったのがガバナンス改革への要求だ。以前から指摘されてきたように、日本の企業経営者のガバナンス意識は総じて弱いままだ。コーポレートガバナンス・コードの登場で、上場企業はガバナンスについて開示せざるを得なくなったため、少しは改善してきた。

 しかしながら、まだまだ開示内容は不十分だ。罰則規定がないガイドラインなので、企業によっては、投資家から見て実際は実行できていない点をエクスプレイン(説明)せず、形式的にコンプライ(遵守)するなど、開示が形骸化している感がある。

 日本取引所グループや金融庁などは重要と思われる課題を追加するなど、いろいろな改善努力を促しているが、残念ながら横並び意識が強い企業サイドの改善はゆっくりしたペースのままである。