写真提供:共同通信社、日刊工業新聞/共同通信イメージズ

 戦後の成長を支えた「機械工業」は、技術の粋を集めた日本のものづくりの象徴であり、今なお大きな可能性を秘めている。本稿では『機械ビジネス』(那須直美著/クロスメディア・パブリッシング)から内容の一部を抜粋・再編集。さまざまな産業における機械ビジネスの真価を探る。

 世界的にEV(電気自動車)の普及が伸び悩む中、水素を使って走る燃料電池自動車に期待がかかっている。その可能性と、乗り越えるべき課題とは?

クルマの電動化の課題とは

機械ビジネス』(クロスメディア・パブリッシング)

 つい最近まで、クルマのEV化シフトが進んでいましたが、ここへきてEV車の世界販売が失速してきています。

 確かにEV車には、走行時にCO2が排出されないというメリットがありますが、「充電時間が長い割に、航続距離が短い」といったデメリットがあります。都市部をササッと走る分には有効ですが、広大な国土を有する国や地域によっては不安要因になります。

 これは私がアメリカの駐在員から聞いた話ですが、6時間ほどEV車を飛ばして取引先を訪問する際、設置済みの充電スタンドの信頼性が薄いことを嘆いていました。アメリカでは、ハリケーンによる洪水や土砂崩れの甚大な被害も多く見られ、EV車を活用するにはこうした地域リスクもあるでしょう。

 EV車の心臓部であるバッテリーは、リチウムイオン電池が主流ですが、寒冷地では電池内部の化学反応や電解質の粘度の変化によって電池の持ちが悪くなるので、経済効果の観点からも地域格差が懸念されます。また、搭載するリチウムイオン電池の製造過程ではCO2が排出されるので、真の意味ではカーボンニュートラルとは言えません。

 一方、ハイブリッド車は、ガソリンエンジンと電気モーターの2つの動力源を使い分けて走ることができます。メリットは燃費がいいことですが、車両価格が高価なことがデメリットに挙げられています。