2000年代、主力事業のカラーフィルムの需要が急速に縮んでいく中で、大きな事業転換を図った富士フイルム。環境や社会の変化に適応し、コアコンピタンスを軸にした大変革を成功させた裏には、領域を超えた価値創造があった。当時、同社のオープンイノベーションをけん引し、FUJIFILM Open Innovation Hubを開設、館長を務めたdesign MeME(デザイン ミーム)代表小島健嗣氏がその要諦を語る。

本稿は「Japan Innovation Review」が過去に掲載した人気記事の再配信です。(初出:2025年1月17日)※内容は掲載当時のもの

経営危機を事業成長の機会に変えた、富士フイルムのパラダイムシフト

 富士フイルムという会社をひと言で表すと、「外部環境の変化に対して、自らのコアコンピタンスを把握し、新たな事業を展開した企業」となるでしょう。

 ここでいう「外部環境の変化」とは、写メールの発売、デジタルカメラの普及、スマートフォンの発売によって、カラーフィルム市場が2000年をピークに年率20%以上のスピードで縮小していったことに他なりません(下図)。もちろん、マーケットだけではなく、これまで築いてきたフィルムを取り巻くバリューチェーン、ビジネスモデルも消失しました。