
アサヒグループホールディングスは、2025年3月からガバナンス体制を刷新し、指名委員会等設置会社へと移行した。この組織変更を機に同社取締役を退任した小路明善会長が、4年間、同社取締役会議長として進めてきたガバナンスの強化策や、現代の取締役会のあるべき姿について語った。
「全員発言」が意思決定の精度とスピードを上げる
――小路さんは2025年3月までアサヒグループホールディングスの取締役会議長を務めていました。現代の取締役会には、何が求められているのでしょうか。
小路明善氏(以下、敬称略) 私がまず思うのは、形ばかりにこだわるのではなく、実効性の高い取締役会とはどうあるべきかを議論すべきということです。
例えば、「取締役のうち半数が社外取締役です」とか、「女性の比率が高い」「幅広い分野で経験を積んだ方をそろえました」といった事実は、取締役会の形としては申し分ないと思います。
ですが、それ以上に重視すべきは、そうした体制を整えた上で、各人の意見を集約し精度の高い意思決定ができているかどうか。そして、議論の結果が執行部門で具体的な戦略や計画として実行され、その成果が企業価値につながっているかどうか。さらに、その一連のプロセスが持続可能であるか。ここまで達成できて初めて、実効性のあるガバナンスと言えます。
経験豊かで多様なメンバーを取締役に選ぶことはもちろん大事ですが、選任後にどのような議論ができるかを、本質的なテーマとして捉えるべきでしょう。