伊藤忠商事 岡藤正広 代表取締役会長CEO写真提供:共同通信社
かつては“総合商社の万年4位”と言われた伊藤忠商事。21世紀に入ってからの成長ぶりは目覚ましく、2021年には純利益、株価、時価総額において業界トップに立った。大学生の就職希望ランキングでも、男女ともに圧倒的な人気を誇る。伊藤忠で何が起こり、経営や組織はどう変化したのか。本稿では『伊藤忠 商人の心得』(野地秩嘉著/新潮新書)から内容の一部を抜粋・再編集。岡藤正広会長、石井敬太社長をはじめとするキーパーソンの言葉を通して、近江商人をルーツに持つ同社に脈々と受け継がれている商人のマインドを明らかにしていく。
岡藤会長が2010年に社長に就任した際、真っ先に行ったのが役員会の回数を減らすこと、会議時間を短くすること、そして会議資料を少なくすることだったという。その背景にある、伊藤忠ならではの商人マインドと、外部環境を言い訳にしない仕事哲学とは?
外部環境を言い訳にしない
『伊藤忠 商人の心得』(新潮社)
前章まではビジネスパーソンが稼ぐために役に立つ言葉を集めたが、この章では商人ならば言わない言葉、やらない行動を載せた。
伊藤忠に限らず、どの会社にも社内ルールがある。また、数々の法令を遵守することも働く人間の責務だ。会社は「遅刻はしない」とか「休むときは連絡する」といった集団を維持するルールを制定する。そして、会社に所属する人間はルールを守らなくてはならない。
それなのに決まっているルールに対して、文句を言う人間がいる。ルールを変えるために自分の都合や外部環境を持ち出してくる人間もいる。
社内のルールはスポーツのルールと同じ。サッカーは11人でやるのがルールで決まっている。それなのに、「うちは弱いから10分間だけ12人でプレーしたい」と言ってくるチームはいない。社内ルールは自分の都合で変えることはできない。
岡藤はこう言っている。
「僕の経験から言うと、仕事ができない人間ほど、社内のルールに対して細かい文句を言ってくる。会議の最中に予算が達成できない理屈ばかりをえんえんしゃべる。そんなことを聞いているだけでムダだ。誰でも戦う条件は同じなんだから。






