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気候変動の影響が世界各地で深刻化する中、その対策は喫緊の課題だ。企業に対しても、気候変動をはじめとする環境リスクにどう向き合い、持続可能な成長を目指していくのか、ESG投資家の厳しい視線が注がれている。
サステナビリティー経営を実践していくために何が必要か。環境ファイナンスの第一人者として活躍する三菱UFJリサーチ&コンサルティングフェローの吉高まり氏に、国内外の最新動向を踏まえ、日本企業が取り組むべき課題について聞いた。
先進国から途上国へ年間3000億ドルを支援
──気候変動への危機感が高まる中、国際的にも脱炭素に向けた取り組みが進んでいます。2015年に採択されたパリ協定では、気温上昇を産業革命以前に比べて1.5度に抑えることを努力目標とし、加盟する全ての国が削減目標を設定し、行動することが義務付けられました。まず、気候変動対策を巡る世界の最新動向はどのようになっているのでしょうか。
吉高まり氏(以下、敬称略) 2024年11月、アゼルバイジャンのバクーで開かれたCOP29(第29回国連気候変動枠組み条約締約国会議)に参加してきました。COP29は「資金(ファイナンス)のCOP」と呼ばれ、削減目標を実現するための気候資金に関する議論が中心になりました。
最大の焦点は、先進国から途上国への資金支援です。年間1000億ドルという現在の目標に対して、2035年までに少なくとも年間3000億ドルに引き上げることで合意しました。
また、パリ協定第6条には、温室効果ガスの排出削減量をクレジット化して国際的に移転する「市場メカニズム」が規定されています。これまで報告の項目や様式、クレジット登録簿の細目等が未確定でしたが、今回のCOP29で詳細手続きが決定し、完全運用化に向けて大きく前進しました。
──COP29については、先進国と途上国との間で交渉が難航したという報道もありました。
吉高 それだけ状況が深刻化していることの表れだと思います。