そのような政策を日本は事実上取っている。外国人労働者はここ数十年の間で拡大を続けている(図表3-5)。人手不足の中で多くの企業が安い労働力としての外国人労働者を求めており、企業の要請にこたえる形で政府も外国人労働者の受け入れを活発化させているのである。
外国人労働者の賃金水準は日本人に比べて明らかに低い。賃金構造基本統計調査では外国人労働者の賃金の把握を令和元年の調査から行っているが、その最新の値をみると、外国人労働者の賃金は全体の平均値より低くなっていることがわかる(図表3-6)。
これには外国人が若いからという要因が大きく寄与しているが、賃金水準が労働者の技能の水準を指し示しているのだとすれば、日本は相対的に技能の低い労働者の受け入れに舵(かじ)を切っていることがうかがえる。
外国人労働者に係る施策についても、制度変更が続いている。政府は人手不足の分野で外国人労働者を受け入れるために、特定技能を2019年から導入している。これまでの技能実習制度は、少なくとも名目上は、出身国において修得が困難な技能等の修得・習熟・熟達を図ることを目的としており、目的が果たされた後は帰国することが前提にあった。
これまで政府は少なくとも表面上は、単純労働のための外国人受け入れは認めてこなかった。こうした観点でみれば、人手不足のために正面から外国人労働者を受け入れることを決めた特定技能制度の導入は、政策的にも大きな転換となる。
特定技能で就労が可能な特定産業分野は、制度導入以降、次々に拡大されている。直近の2024年3月の閣議決定においても、すでに認められている介護、ビルクリーニング、素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業、建設、造船・舶用工業、自動車整備、航空、宿泊、農業、漁業、飲食料品製造業、外食業の12分野に加えて、自動車運送業、鉄道、林業、木材産業の4分野が追加されている。
さらに、同年6月には入管法等の改正によって、人手不足分野における人材の育成・確保を目的とする育成就労制度が創設されており、政府は人手不足解消のための外国人労働者受け入れに積極姿勢を強めている。
特定技能の受け入れ枠も制度新設以降、拡大を続けている。同閣議決定においては、政府は今後5年間の受け入れ見込み数の枠を82万人とする方針を掲げ、過去、2019年から2024年までの5年間で約34.5万人と設定していたものを大幅に拡充している。