これが最後かもしれない
移籍した初年度の昨シーズン、全日本選手権で初めての一桁順位である7位になると今シーズンは2019-2020シーズン以来となる強化選手に復帰。
「これが最後かもしれないという気持ちで臨みました」
スケートでは大学卒業を1つの区切りにする選手も少なくない。青木も大学4年生になっていた。
ショートプログラム『Young and Beautiful』は自ら振り付けた。
「振り付けはもともと興味があって。踊ることが好きで、小さい頃から音楽がかかったら踊るという練習を日常的にしていたので、小さい頃からやってきたものを自分のプログラムとして表現したいと思いました。最後のシーズンだと考えていたので、先生からも許可を得てやりました」
フリーは『She』。振り付けはこれまで何度もお願いしてきたミーシャ・ジー。
「最初に曲をいただいてどういうテーマでやろうかという話になったとき、ミーシャから『このSheは母親であったり、誰か思う人であったり、そういう人物を作ってストーリーを立てたらいいんじゃないか』と聞いて、最後のシーズンかもしれないと思っていたので、自分のスケート人生をこの曲で表現したいと伝えたら賛成してくださいました」
ストーリーをこう説明する。
「序盤ではスケートに出会ったところから本当に楽しくて夢あふれているような私を表現していて、中盤、曲調が変化したところで怪我をしたり葛藤もあってたくさん悩んだ時期を。コレオに入る前から少しずつ負った傷をはねのけて、またさらに羽ばたいていける自分を表現しています。ほんとうに私はスケートが好きなんだなっていう気持ちを全面に出したプログラムです」
情感の立ち込めた演技は、どの試合でも、観る者に強い印象を残した。フィニッシュ後の笑顔もまた、輝きを放ち続けた。
「どの試合でも、私のスケート人生を表現したプログラムを見てくれてありがとう、という気持ちでフィニッシュしていました」
まさにスケート人生を表現した、葛藤などを抱えつつも「スケートが好き」という思いを取り戻した、達することができたストーリーから生み出される表現であった。
あらためて、数々の困難と向き合いつつ、それでもスケートを続けられた原動力を尋ねる。
「いちばん大きいのは支えてくださった方々に恩返ししたい、家族にほんとうにここまで苦労をかけているのにやめたら……という気持ちがありました。それに、やっぱりスケートをすることで自分を表現することが好きで、その気持ちを定期的に確認していました。ノービスで優勝したときにアイスショーにも出させていただいて、楽しかった記憶でいっぱいなので、アイスショーにも一回出たいという気持ちも大きかったです」
出たいと思っていたアイスショー出演がかなったのは今年2月のこと。高橋大輔がプロデュースした「滑走屋」だ