阿茶局と綿帽子

 最後に、阿茶局の有名な逸話をご紹介したい。

 ある年の正月、駿府の家康のもとに、徳川秀忠の名代として、酒井家次(大森南朋演じる酒井忠次の息子)が、年頭御礼に訪れた。

 その時、家次はうっかり鳥帽子を落としてしまい、寒さのあまり、烏帽子の下に綿帽子を着用していたことが、家康にバレてしまう。

 家康は家次を、「若者に綿帽子など、必要ない。もし、東西の諸侯が集る江戸であったら、将軍が外見を失う」と、叱り始めた。

 すると、家康の側にいた阿茶局が、家次が風邪をひいていたため、「私が綿帽子を被って、温かくして登城するように申し上げた」と助け船を出した。

 阿茶局の才覚と優しさに心打たれたのか、家康も機嫌を直したという。

 あくまで逸話であるが、ドラマの阿茶局も同じ場面が訪れたら、きっと鮮やかにその場を収めることだろう。