エクスファクトリーとは?

「私たちは今後も美しい製品を作り続けますが、それと同時に、エクスファクトリーという名のデジタルサービスを立ち上げ、たとえばエンターテイメント・パッケージやADASパッケージなどを提供することになります。こうすれば、顧客は購入後にも新しいデジタルサービスを入手することができる。こうしたデータのやりとりは、メルセデス・ベンツ・インテリジェント・クラウドを介して行われますが、私たちはデータのセキュリティ性を極めて重視してシステムを構築しています。このようなサービスを通じて我が社が得られる利益(ここでシェーファーは「売り上げではなく利益です」と改めて念押しした)は、2025年までに10億ユーロ(約1590億円)程度になると試算しています」

 こうしてメルセデスの製品はいよいよデジタル化、ソフトウェア化が進んでいくわけだが、だからといって、自動車としての伝統的な価値であるメカニカルな部分もおろそかにはしないと、シェーファーは約束してくれた。

「メルセデスのドアを開いてキャビンに乗り込むと、あなたは特別な世界に迎え入れられることになります。その特別な世界を言葉で説明するのは容易ではありませんが、ひとたびクルマを運転し始めれば『ああ、これこそメルセデスだ』と感じることでしょう。ここで、とりわけ私たちが重視しているのがNVH、つまりノイズ、バイブレーション、ハーシュネス(路面からの突き上げなどを意味する)などに関連するものです。メルセデスは、これまでにも静粛性や快適性の面で傑出した存在でしたが、今後も改良の手を休めるつもりはありません。将来的にソフトウェアの重要性が次第に高まっていくのは間違いありませんが、だからといって、メルセデスが伝統的なクルマの価値を忘れるわけではないことを、ここで明言させていただきます」

 静粛性や快適性を軽視することなく、さらにデジタル化やソフトウェア化を進めていくことで時代の変化に対応していく。これがメルセデスの将来像とみて間違いなさそうだ。