自社開発オペレーティングシステムMB.OS

 そうした新時代のメルセデスを考えるうえで、忘れることができないのが高度にデジタル化された次世代商品群の投入である。今後はエンジン車にせよEVにせよ、メルセデスは自社開発した自動車用オペレーティングシステムのMB.OSを順次導入し、今後のビジネスモデルもソフトウェアをより重視したものに転換していく方針だという。

「新型Eクラスには、MB.OSがすでに部分的に採用されています」とシェーファー。「Eクラスのインフォテイメントシステムには、すでに100%MB.OSを採用しています。そして来年末までにはMB.OSを全面的に採用した製品を発売する計画です」

 自社製オペレーティングシステムの開発は、メルセデス以外にも複数の大手自動車メーカーが取り組んでいるが、メルセデスのものはインフォテイメント、ADAS(運転支援システム)、ボディコントロール(サスペンションなどシャシー側のコントロール系)、ドライビング&チャージング(おそらくはEVを中心とするモデル用で、パワートレインならびに充電システムをカバーする)の4分野で構成されており、これまでは多くのCPUで制御していたものを、今後は少数のパワフルなCPUと高度なソフトウェアで制御。ソフトウェアの占める比率を高めることで柔軟なアップグレードを可能にすることを目指していく。

 ここで参加者のひとりがMB.OSとソフトウェア・デファインドカーとの関係について質問した。

 ソフトウェア・デファインドカーとは、ソフトウェアが製品の価値を大きく左右するクルマのこと。今後、EVが普及していくと、クルマは次第にソフトウェア・デファインドの傾向を強めていくと予想されている。

 そうした製品の多くは、これまでオプション設定されていた装備をあらかじめ車両に搭載して販売。納車時もしくは納車後にインターネット経由で車両のOSにアクセスし、特定の機能を使用可能な状態にすることでオプション機能を提供すると見られる。

 これであれば、工場ではオプションの装着の有無にかかわらず同じハードウェア構成で生産すればいいので生産効率の向上に役立つほか、納車後もオプション機能の追加が可能になるので、販売後も長期にわたって車両の価値を維持できると考えられている。

 そうした未来像について訊ねると、シェーファーは「あなたの捉え方は完全に正しいと思います」と答えたのである。