ときわ亭の平均客単価は3300円(税込み)。筆者は「ときわ亭」で何度か食事をしているが「90分3000円のレジャー」というイメージを抱いている。それは例えば「1万円を払って、品質の高い肉を食べた」というものとは異なり、「90分楽しく飲んで食べて3000円」というものだ。

 だから、お客が若い。見事にZ世代ばかりとなっている店もある。

 同店を展開するのはGOSSO(本社/東京都渋谷区、代表/藤田建)。ビルの空中階にバルやカジュアルレストランを展開してきたが「年商100億円規模の持続可能な企業」を目指すようになり、パートナーを見いだして「サワー注ぎ放題と焼き肉」の「ときわ亭」を生み出した。

 この仕組みにタッチパネルオーダーを合わせて、代表の藤田氏は「ストレスフリーの焼き肉エンターテインメント」と称している。「ときわ亭」はこの「ストレスフリー」が大きなポイントとなっている。

 藤田氏はこう語る。「当社のミッションに『人生に潤い』があります。これは大切な人との時間を過ごす喜びを分かち合うこと、楽しい場を共有することです。『ときわ亭』はお客さまが待ち時間0秒でお酒を注ぐことができて、自分で肉を焼き、自分のタイミングでタッチパネルで注文する。全てがマイペース。だから、店内に『すみませ~ん』という言葉が存在しない。従業員もお客さまもストレスフリーで楽しい場になっています。まさに当社のミッションを具現化した業態です」

アルバイトに若い従業員が定着する仕組みがある

 GOSSOが重視していることは「お客さまが行きたい店は従業員が働きたい店」ということだ。そこで「従業員にとって楽しい職場」であることを何よりも優先した。

 ときわ亭にはアルバイトの離職率を下げるための仕組みがある。それは、アルバイトが勤務に就いて、初日、1週目、8週目、12週目といった節目に社員からアルバイトへ適切な声掛けを行うための仕組みだ。

 これは、これまで飲食店が「勘と経験」で行ってきたことを「数値化」することで取り組み方を変えようということである。

 「勘と経験」の世界には「アルバイトはすぐに辞めるよね」という言葉がある。これは定性的な表現であり「いつ辞めるのか」「なぜ辞めるのか」が示されていない。これを解決するために、この仕組みを開発した会社ではクライアントのアルバイトの定着状況をデータで解析した。それによるとアルバイトの「辞め時」は4つに収れんされ、初日(定着率87.5%)、1週目(同74.1%)、4週目(同57.3%)、8週目(同45.3%)となった。

 この「辞め時」の節目とは「アルバイトの承認欲求の節目」(藤田氏)であるという。例えば、アルバイト初日では「自分の制服や名札が用意されている」「先輩従業員が自分の名前を知っている」ということがとても重要となる。ときわ亭はここに仕組みを入れることで、それ以降の「辞め時」の承認欲求に適切に応えようとしている。

 アルバイトの定着性が高まると、店の従業員のチームワークが整う。従業員は店で働くことが楽しくなる。それを見ているお客は、そのようなチームワークを素敵だと感じ、またこの店に来たいと思うきっかけとなり、ここで働いてみたいとも思うようになる。だから、ときわ亭のアルバイトはZ世代をはじめとする若い世代が多い。

 従業員の定着性が高まると、社員は休日をしっかりとれるようになる。こうしてお客も従業員もストレスフリーになっていく。現在「ときわ亭」の定着率は80%という。