予約しても食べられない!?幻の味とは
坂網猟で獲った真鴨は肉と脂のバランスが良く、野生のものだけが持つ独特の旨味があります。銃で撃った鴨は肉に血が回ってしまいますが、網にかかった鴨は周囲の松の枝などに引っかかるため、無傷で血を流さずに捕獲されます。そのため肉の味を損なうことがなく、臭みもありません。また、ほかの網猟のように大量に獲ると、網の中でバタバタして鴨が痛み、ストレスもかかります。そうすると、味も損なわれるそうですが、坂網はそんなこともありません。
お店では獲れた日から4〜5日寝かせて熟成させたものを出しているそうです。ただ、このフレッシュな鴨を食べるのがなかなか難しいのです。猟に出ても獲れない日があり、また、雪が降ると猟に出られないため、年間200羽しか捕れない貴重な鴨なので、予約をしても食べられないこともあります。
その場合は冷凍保存したものを出してくれるとのこと。また、お店では坂網とは猟法は違いますが、冬季に生け捕した天然の真鴨を保存して、1年中鴨料理を出しています。お店には日本中から鴨を目当てにお客さんが来るそうです。
一番美味しいのは12〜1月の雌の鴨
11月に獲れる鴨はシベリアから渡ってきたばかりで疲れていることと、まだ暖かいのであまり脂肪を蓄えていません。本当に美味しいのは12月から1月にかけての、コクがあり、香ばしい味の雌だといいます。そのあと鴨はシベリアに帰るために交尾しはじめ、体が痩せてくるので味が落ちるそうです。そしてシベリアに帰って卵を産み、育った子どもと一緒にまた同じ場所に渡ってくるのだそうです。
鴨は部位によって味も違います。柔らかいのがムネやロースで、ステーキにしたり鍋に入れたりするのがおすすめの食べ方。お店のオリジナル料理・鴨治部鍋は、鴨ロースに完全には火を通さずしゃぶしゃぶ風にいただきます。噛むうちに味が出る太ももや手羽は串焼きで。鴨に癖があるので甘味のない純米酒がよく合うと、利き酒師の資格も持つご主人は言います。
私もまだフレッシュな鴨肉を食べたことがありません。今から来季の予約をしても果たして口にできるかどうか・・・まさに幻の鴨ですね。