今季、最も心に残る試合
これらの試合の中でも心に残るのはイギリスでの優勝だと言う。
この大会では、フリーの滑走を前に重圧があった。
「すごい緊張しました」
と、三原は言う。
最終滑走の三原の直前に滑ったショートプログラム2位のイザボー・レヴィト(アメリカ)が会心の演技を見せ、自己ベストを更新する高得点を出していた。
「レヴィトちゃんの点数やお客様の歓声は聞こえていました。レヴィトちゃんは練習のときからどこでもジャンプを跳んでいる、と感じるくらいフレッシュな印象があって、すごいのは分かっていました。『やっぱりいい演技だったんだな』と思いました」
レヴィトの出した得点を考えると、そのまま1位で大会を終えるためにはミスは許されない。自然と重圧がかかる。
それでも、「自分の演技に集中しよう」と思った。そして重圧に打ち克った結果が優勝だった。プレッシャーに負けなかった喜びは、終盤のコレオシークエンスでの笑顔にあふれていた。演技終了後の小走りのような動きにもあった。
勝てた理由を、三原はこう捉えている。
「今まで自分がミスしてしまって順位が下がることが多かったので、どの瞬間でもミスしたくない、最後の最後まで何一つミスをしない、隙がない演技がしたいと思っていました。その思いがいちばん強かった試合だったと思います。そういう風に言い聞かせるのはプレッシャーになるところもあるかもしれないですけれども、やるぞ、という思いがすごい強かったです。壁を破れて1つ上がれたというのは自分の中にあります」
それがシーズンを通しての好成績を支える要因ともなった。粘り強く取り組み、何度も壁に跳ね返され、それでも一段上がることができたのは、あきらめることなく、自身を信じて歩む三原の姿勢あればこそだ。
そしてフィギュアスケートへの限りない思いも支えだ。2019-2020シーズンには体調不良により1シーズン、休養をよぎなくされた。それでも少しずつ復調し、世界の舞台に立つところに戻ってきて、さらに進化を見せる。そこに三原の真骨頂がある。
好成績を残し続けたシーズンも佳境を迎え、目前にさいたまスーパーアリーナで開催される世界選手権が迫る。2017年以来、6年ぶりに出場する舞台だ。
「念願の世界選手権なので、自分の最高の演技をしたいです。やっぱり出るだけの世界選手権にはしたくないので。ショートプログラムもフリーも、今シーズンやってきた中でいちばんいい演技を滑りきりたいなって思っています。今シーズンは見せ方といった部分でもお客様やジャッジの方に届くような演技ができてきているのかなって思っていますが、しっかりレベルを上げたプログラムをしたいです」
よりレベルアップした姿とともに自分の演技を貫きたい。それを果たせたとき、笑顔で終えられる大会になる。