取材・文=吉田さらさ 写真=フォトライブラリー

日向大神宮

「京のお伊勢さん」

 今回は京都のお気に入り神社のひとつである日向大神宮をご紹介しよう。この街に数ある神社の中では案外知られていないようだが、市街地からすぐとは思えない自然に囲まれた、とっておきのパワースポットだ。地下鉄東西線の蹴上駅から少し歩くと一の鳥居があり、蹴上疎水公園に続く緑地がある。

 ここはすでに高台なので京都市内の眺めもよく、蹴上義経地蔵と呼ばれる石仏(正確には大日如来像)もあるので、時間があれば立ち寄って行きたい。

 やがて小さな橋があり、観光名所の琵琶湖疎水とインクラインを眺めることもできる。続いて二の鳥居。ここを過ぎると坂がきつくなり、「あれ、いつの間にこんな山の中に来たのかな」と驚く。さらに登り、日向大神宮に到着。案外遠かった。

日向大神宮 境内

 境内を回る前に、簡単に由緒を見ておこう。社伝によれば、顕宗天皇の御代(485~487年)に、日向の高千穂の峯の神蹟を遷して創建されたとのこと。高千穂は天孫降臨神話の舞台である。平安時代になると、京の街に疫病が流行った。この神社でそれを鎮めるための勅願が行われ、お告げにしたがって境内の霊泉の水を万人に与えたところ、たちまちおさまったという。その故事に基づき、現在も、毎年元旦に「若水祭」という神事が行われている。

 応仁の乱で社殿や古記録は焼失したが、慶長年間(1596~1615年頃)に伊勢出身の人物が再興した。江戸時代には、東海道中の安全祈願や伊勢神宮の代参の場として大いににぎわったとのこと。そのような経緯により、この神社は「京のお伊勢さん」と呼ばれるようになったのだろう。