天の岩戸で「ぬけ参り」

 特におすすめなのは、内宮の左側の山道を少し登ったところにある天の岩戸である。こちらは、天照大御神がお隠れになったという岩戸神話に基づくもので、巨岩をくりぬいて通り道ができている。ここをくぐりぬけると罪穢れが祓い清められて福を招くとされ、これを「ぬけ参り」という。節分の日にぬけ参りをしてそれまでの厄を落とし、心身を清めて立春を迎える風習があり、この日は境内にて献火神事と古札の焼納が行われる。しかし、その他の日も常時くぐれるようになっているので、ぜひ一度お試しを。

天の岩戸

 時間と体力が許せば、もうひとつ足を伸ばしていただきたい場所がある。境内を出てさらに山道を進む。距離はさほどではないが、勾配がきつく、もはや登山である。実はこのあたりの山道は京都一周トレイルの東山ルートの一部であり、トレッキングやトレイルランニングをする人もいるようなコースなのだ。

 息を切らしながら登ると、ようやく目指す鳥居が見えた。伊勢神宮遙拝所だ。遙拝所とは、はるか遠くにある聖地を拝む場所で、ここで手を合わせれば、お伊勢さんに詣でるのと同じご利益があるということだ。

伊勢神宮遙拝所

 残念ながら伊勢神宮方面は木が茂っていて遠方は見えないのだが、反対方向の京都の街はきれいに見渡せる。平安神宮の赤い鳥居、そしてその真っすぐ先に北大山の左大文字が見えた。ならば、伊勢神宮、伊勢神宮遙拝所、平安神宮、左大文字が一直線上にあるということか。実際にそうなのかはわからないが、少なくとも、わたしの目にはそう見えて、何か大発見でもしたような気分になったのである。