全世界でエネルギー、素材、ライフサイエンス分野のプラント建設プロジェクトを進める千代田化工建設。複雑なプロジェクトの進捗管理をデジタルによって整流化し、設計、調達、工事におけるリスクを早期に特定し、必要なリソースの最適配置を行うことで、リスクを適正にコントロールしていくことを目指している。同社執行役員CHRO兼CDO 人事・DX本部長の熊谷昌毅氏が、プロジェクトとコーポレートをデジタルでつなぐ企業変革を語った。
※本コンテンツは、2022年12月2日(金)に開催されたJBpress/JDIR主催「第15回 DXフォーラム DAY3」の特別講演Ⅰ「プロジェクトマネジメントDX: 千代田化工建設の挑戦」の内容を採録したものです。
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プラント建設は関係部署が干渉しながら進む
千代田化工建設は、創設から70年、グローバル従業員数は約5000名の企業である。LNG(液化天然ガス)などのガス関連を中心に、石油、化学プラントの建設を主業としている。世界60カ国以上にプロジェクト実績を持ち、海外売上比率は60%を超える。2022年3月期の売上高は3111億円である。
千代田化工建設 執行役員CHRO兼CDO 人事・DX本部長の熊谷昌毅氏は「当社は、70年の研さんを重ねた技術を生かし、社会の『かなえたい』を共創(エンジニアリング)することを存在意義と考えて、日々活動しています」と語る。
現在も日本国内をはじめ、米国、カタール、インドネシアなど、各地でプラント開発プロジェクトが進行中であり、熊谷氏はロシア「サハリン2」プロジェクトに参加した経験も持つ。
昨今は脱炭素への取り組みを強化しており、水素サプライチェーンの構築、蓄電池プラントの建設やエネルギーマネジメント分野などの事業も手がける。またライフサイエンス分野にも注力し、バイオ医薬品、ワクチンの製造プラントの建設も行う。
プラントは「プロセス装置工程で構成される産業設備」と定義される。液体やガスを物理、化学反応させて製品を作る装置を作り、それらをつないでいくのがプラント建設だ。プラント建設プロジェクトは、設計(Engineering)、機器の材料調達(Procurement)、建設工事(Construction)を行い、試運転(Commissioning)までもっていく工程を指す。それを略して、EPCプロジェクトと呼んでいる。
「EPCプロジェクトは、通常数年、現在遂行している長いもので7年もの年月がかかります。規模の違いも大きく、工事にかかわる作業者の工数は、数万~数千万時間と非常に幅があります」
プラント建設は、複数の設計要素と調達、そして工事の工程が全て同時並行に進んでいくことが特徴である。熊谷氏は、これが業務の効率化を考える際に大きな課題であると語る。
例えば、ビルの建設プロジェクトでは、躯体、基礎、設備、配線・配管、そして意匠の設計という流れで、ほぼ、前の工程からの情報を踏まえて進めることができる。設計だけではなく、建設材料や設備の調達と建設工事も、設計と同様にウォーターフォールのように流れていく。
「ビルの建設は、上流の工程の設計情報を確定し、その情報を下流に確実に伝えながら進んでいきます。それに対して、プラント建設は、建設する装置が非常に複雑で、プロセス、配管、電気などの各設計工程が相互に影響しながら確定していきます。そのため、常に各設計工程を同時並行(コンカレント)に進めなければいけません」
プラント内に置く機器の仕様を決定して、外部のメーカーに依頼したところ、その機器のサイズが想定と大きくなり、他の機器の設計に跳ね返るというようなことが頻繁に発生する。また、装置の荷重が決定して最後に設計情報が揃う土木工事が、工程上は最初に工事を開始し、そのあとの装置設置ができるようにしなければならないというように、工事計画も非常に複雑である。