罰金、最大で世界売上高の20%
一方、デジタル市場法はEU域内で数カ月内に一部施行され、24年に全面的な適用が始まる。同法は、アップルや米グーグル、米アマゾン・ドット・コム、米メタなど巨大プラットフォーマーの市場支配力に制限をかけ、競争阻害行為の抑止を狙っている。時価総額が750億ユーロ(約10兆8000億円)以上か、EU域内の年間売上高が75億ユーロ(約1兆800億円)以上の巨大企業を「ゲートキーパー(門番)」に指定し、ルールを順守させる。
ゲートキーパー企業は、自社製品や自社サービスを、プラットフォームに参加する他社の製品/サービスよりも優遇することが禁じられる。違反すれば、世界年間売上高の最大10%の罰金を科される可能性がある。また違反が繰り返された場合は上限が20%に引き上げられ、企業買収(M&A)が禁じられるなど他の罰則が科される場合もある。
ブルームバーグによれば、アップルの22年9月末までの1年間の世界売上高は約4000億ドル(約54兆1700億円)。もし最大の罰金を科された場合その額は800億ドル(約10兆8300億円)に上る。
一方で、アップルのApp Storeによる収益は、同社売上高全体の6%。欧州だけでは全体のわずか2%以下となる。単純計算で80億ドル(約1兆800億円)となり、罰金の方が高くつく。
App Storeへの批判かわす
アップルはこれまでApp Storeに対する批判をかわすために一定の譲歩を示してきた。App Storeを調査していた日本の公正取引委員会と和解したことに伴い、世界各地で規約の一部を改定した。これにより22年3月30日から、「リーダーアプリ」と呼ばれる雑誌や新聞、書籍、動画、音楽などの閲覧・視聴用アプリに限り、外部ウェブサイトへのリンクの設置を認めた。利用者は外部決済サービスで支払いを済ませられるようになり、これらアプリの開発者はアップルが徴収する手数料を回避できるようになった。
21年8月には、アプリ開発者らが起こしていた集団訴訟で和解。開発者が、アカウント登録を通じて入手した利用者の電子メールアドレス宛てにメッセージを送り、他の決済方法を案内することを容認した。21年1月にはApp Storeで得た年間収益が計100万ドル(1億3500万円)以下の開発者を対象に決済手数料の料率を30%から15%に下げた。