優先事項は在庫リスクの軽減
カナリスによれば、スマホ市場は消費者需要に対し非常に敏感であるため、メーカー各社は厳しいビジネス環境への迅速な対応を余儀なくされている。大半のメーカーにとっての優先事項は、需要減を考慮して在庫が積み上がるリスクを軽減することだという。
各社は7月時点で大量の在庫を抱えていたが、その後の積極的なプロモーションや値下げ攻勢によって9月から在庫問題が徐々に解消されるようになった。新製品の価格戦略については、物価上昇に敏感な消費者からの反発を避けるため、アップルでさえも慎重な価格設定を強いられたという。
スマホ市場はしばらく回復の兆しが見られない。「このため、22年10~12月期および23年前半において、各社は流通チャネルと密接に連携しながら、サプライチェーン(供給網)と協力し、慎重な生産計画を立てる必要がある」とカナリスは指摘する。
アップル、増産計画見直し
アップルも慎重な生産計画を強いられているようだ。ブルームバーグ通信やロイター通信は先ごろ、アップルが「iPhone 14」シリーズの増産計画を見直したと報じた。
それによると、アップルは22年後半、新型iPhoneシリーズを最大600万台増産する計画だった。しかし当初予想していた需要増が見込めないと判断し、増産計画を取りやめた。サプライヤー各社には、当初の計画通り9000万台の生産を目指すと通知したという。
その一方で、高価格帯モデルの「iPhone 14 Pro」は普及モデルの「iPhone 14」よりも需要が高まっているとみているようだ。あるサプライヤーが生産能力を「Pro」にシフトしたとブルームバーグは報じた。
22年10~12月のスマホ市場は、需要が旺盛だった前年同期と比べ緩やかながら着実な販売が期待できるとみられる。しかしこの四半期を市場回復のターニングポイントと判断するのは時期尚早だとカナリスは指摘している。