デジタル社会形成の司令塔として、未来志向のDXを大胆に推進し、デジタル時代の官民の基盤をつくり上げることを目指して設置されたデジタル庁。徹底的な国民目線でのサービス創出やデータ資源の利活用、社会全体のDX推進を通じ、全ての国民にデジタル化の恩恵が行きわたる社会を実現するべく、取り組みを進めている。その詳細について、第1次・2次岸田内閣でデジタル大臣を務めた牧島かれん氏に聞いた。

※本コンテンツは、2022年7月20日に開催されたJBpress/JDIR主催「第4回公共DXフォーラム」の特別講演4「日本が目指すデジタル社会」の内容を採録したものです。
※本記事は、2022年7月時点の情報を基に記載いたします。

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デジタイゼーションからデジタルトランスフォーメーションへ

 2021年9月、社会全体のデジタル化を推進し、国民にデジタル化の恩恵を届けることを目的としてデジタル庁が設置された。第1次・2次岸田内閣において同庁の大臣を務めたのが、牧島かれん氏である。同氏は「ひと手間かけることで、おもてなしの気持ちを表現することも大事」と話した上で「そのひと手間をどこにかけるのかが問われる時代になっている」と指摘する。

 デジタル化はあくまでも手段であり、どのように商品やサービスを提供すれば新たな価値を生み出すことができるのかが、議論の出発点になるべきだ。同庁では、同様の理念のもとで、デジタルガバメントや 教育や医療等の準公共分野のデジタル化を進めている。

「『デジタイゼーション』『デジタライゼーション』『デジタルトランスフォーメーション』。これらは似たようなカタカナ言葉ですが、その意味は全く異なります。紙で行っていた業務をPDFにしてフォルダに集める作業は『デジタイゼーション』にしか過ぎません。フォルダにPDFがいくらたまっても、データを検索したり分析したりすることはできないからです。デジタル化を前提として、仕事の進め方そのものをつくり直さなければなりません。『デジタイゼーション』から『デジタライゼーション』へ進化させ、さらに『デジタルトランスフォーメーション』まで到達させることを目指す必要があります」

 昨今、はやり言葉のように使われている「DX」を、同氏は「新たな価値を生み出すこと」と表現する。デジタルを通じて付加価値を生み出すことが、本当の意味での「DX」なのだ。

「デジタル庁は、デジタルの活用によって個々のニーズに合ったサービスが選択できるようになり、その結果、一人一人が多様な幸せを感じられる社会を目指しています。だからこそ官民問わず、さまざまな人々に参画していただいているのです。この点で、デジタル庁は従来の霞が関とは異なる特徴を持っています。この新しいモデルをデジタル庁だけで終わらせるのではなく、霞が関の中の1つのショーケース(好事例)とし、風通しの良い組織(行政)への変革を目指しています」