新型コロナワクチンも手がけるファイザーは、米国に本社を置く大手製薬会社である。同社は、「ヒト、モノ、カネ」ではなく、社員の潜在能力を解き放つ「ヒト、ヒト、ヒトの人財戦略への転換 」のため、人事部門をピープルエクスペリエンス部門へ刷新し、さまざまな観点から変革に着手している。中でも人財戦略の1つであるリーダーシップ開発では「クロスファンクショナルタレントディスカッション 」を導入し、リーダー候補を多面的に評価、次代をリードする人財を育てている。同社の取り組みについて、取締役執行役員人事・総務部門長の相原修氏が解説する。

※本コンテンツは、2022年2月28日に開催されたJBpress/JDIR主催「第1回 戦略人事フォーラム」の特別講演「事業戦略実現に向けたファイザーの人財戦略」の内容を採録したものです。

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製薬大手ファイザーによる「ヒト、ヒト、ヒト」戦略への転換

 少子高齢化を端緒とした社会保険料の引き上げ、あるいは薬価改定による薬剤費の引き下げなど、製薬業界を取り巻くビジネス環境には大きな変化が起きている。他のあらゆる業態と同様にDXへの対応も急務である。

「これまでのファイザーの戦略をより幅広い製品を扱う総合型製薬企業、M&A、ファイナンス、コマーシャルパワーハウスとするならば、これから目指す方向はフォーカスした革新的な製薬企業、自律的成長、サイエンスパワーハウス」だと話すのは、ファイザー株式会社の取締役執行役員人事・総務部門長の相原修氏だ。

 とりわけ同社は「社員の潜在能力を解き放つ」ことをパーパス経営実現の軸の一つに掲げ、ヒト・モノ・カネを見据えた事業戦略から「ヒト、ヒト、ヒト」を見据えた事業戦略への転換を図っており、人事部門は「ピープルエクスペリエンス部門」へと名称変更された。

「(ピープルエクスペリエンス部門で)われわれが行うこと全ての中心に、社員を置く。社員のエンゲージメント、社員が最大限の力を発揮する機会をつくり出すこと、そして社員の能力をさらに高めることに注力します。その結果として社員の潜在能力を解き放とうと考えています」

 具体的な取り組みの1つが、業務効率化の施策を複数組み合わせた「意味のある仕事ができる時間」の捻出だ。2019年より「定期的会議(頻度・時間・参加人数)の削減」「金曜日に定期的会議を入れず、作業と計画に集中するFocused Fridaysの導入」「会議時間を減らして週単位で10時間を取り戻す『#ClaimBackTen』運動」「Eメールの頻度を減らし会話機会を増やす」などの施策により、会議・メールに費やす時間を半減させた。

 また、社員が生き生きと働く職場づくりをテーマに、その日の服装を自分でデザインする「Dress for Your Day」、働く場所・時間を自分でデザインする「Log in for Your Day」を新たに開設。コロナ禍においては、在宅勤務が拡充され、現在は「オフィス勤務は最低月4日」に設定されている。