3つの着眼点で強化する

 業績が悪くなると、やたらに営業の訪問活動量を増やしたり、インセンティブを高くしたり(その分目標も高くなる)と、目先の施策を打つ企業が多くなる。しかし、それでは残念ながらなかなか苦境から脱することは出来ない。なぜなら、市場・顧客の変化に対応できない限り、永続的に売上向上をしていくことは難しいからである。

 そこで上記事例にもあったように、営業力を強化していくためには3つの視点が必要になる。

① 営業戦略面での着眼点
 営業は往々にして一匹狼になりがちである。放っておけば各自の嗅覚で獲物を捕りに行く。だが、それでは生産性は上がらない。営業を束ねて同じ方向を向かせるためには戦略(=方針)が必要だ。それは、市場・顧客の選択と集中である。 どこの市場・顧客を取りに行くのか(または捨てるのか)が明確になっていない限り、競合には勝っていけない。

② 営業プロセス面での着眼点
 営業には必ずプロセスがある。どのプロセスでどのようなタスクを実行すればよいか、自身がわかっていなければ、お客様の満足度を向上させることができない。そのためには、購買プロセスの研究が必要である。 お客様の視点に立って、どのプロセスでどのような期待をもっているのか。その期待が明確になれば、それに応じたアクション(=タスク)を決めればよい。

③ 営業スキル面での着眼点
 営業戦略、営業プロセスと営業スキルはセットで考える。いままでと違う市場・お客様、またはあるプロセスを強化しようとすれば、求められるスキルも変わってくる。しかし0からスキルを開発する必要はない。なぜなら、そのスキルは社内の誰かが持っている可能性が高いからである。 そのスキルを可視化(転移可能なものにすること)し、トレーニングを積み重ねることで、営業スキルを習得させることが可能になる。

 上記でP社の営業改革事例を紹介した。営業改革の場合、対処療法的にアプローチする企業を散見するが、今回の事例のように一歩引いて、客観的・俯瞰的に問題点を抽出し、それを解決するアプローチこそが、近道になる。

コンサルタント 坂田英之(さかた ひでゆき)

株式会社日本能率協会コンサルティング
経営コンサルティング事業本部 営業・流通小売センター
チーフ・コンサルタント

1991年日本能率協会コンサルティング入社。製造業、サービス業、情報 ・通信産業などのマーケティングおよび営業競争力革新を専門領域とする。営業マネジメントシステム開発、セールススキル評価および強化、営業部門情報武装化(SFA) 支援、ソリューション営業実践支援などのコンサルティングの経験を有する。