本当の真面目とはプロジェクトの成功に責任を持った言動をすること

 自分が工数オーバーになっていることについて、「私は真面目なので、仕事を断れないです」と“真面目アピール”をする人もいる。そんな人には、「それが本当の真面目ですか?」と問いたい。真面目という言葉は、「降ってきた仕事を断れない、調整できない」自分を正当化するために使うものではない。本来的な意味で真面目とはプロジェクトの成功に責任を持って行動する、時間配分を決めるということであるはずだ。

プロジェクトを悲劇の舞台だと思っていないだろうか

 わざと少し皮肉って表現すると、「私は(仕事ができて真面目だから)仕事がどんどん降ってきて大変な目にあっています。なんてかわいそうな私なのでしょう」といった感じで、悲劇の主人公になりきり、そんな自分に浸っている人を見かけることがある。

 そんな人にここで正論をお伝えしたい。「時間がない」ことを優秀さと真面目さで正当化するのは間違っている。大変な悲劇の主人公になっている自分に酔っているのもおかしなことだ。ここで、忘れがちな本質を思い出そう。プロジェクトメンバーは、健康・安全を前提としたうえで、プロジェクトの成功に真摯であるべき。自分がオーバーフローして、プロジェクトに遅延などの悪影響を及ぼすことは真面目だとは言えない。真面目というなら、プロジェクトの成功に対して真面目であるべきだ。プロジェクトの目的に真摯ならば、自分の時間が足りないことが解った時点で、関係者と工数調整をするはずである。仕事を他の人に渡したり、優先順位の低い仕事の先送りを関係者で合意したり、なんらかの“調整行為”をするのが本当の真面目な態度なのである。

 例えば会社の経営において、もしお金がショートしそうになったら、資金繰りに走り回るだろうし、支払い時期を延ばしてもらうように折衝するものだ。そうしないと、会社がつぶれてしまうから、本気で一生懸命に関係者に調整・交渉をするはずである。 同様に、自分の時間が十分にとれずにプロジェクトに悪影響を及ぼしそうなことが分かったら、自発的に上司や周りの人たちと工数調整をするのが、本来の真面目な姿だ。真面目の本来の姿に立ち返ろう。

「私は前から大変だと言っているのですが、上の人が工数調整してくれないんです」と上司頼りになっている人、(調整をしてくれない)上司を悪者として嘆いているだけの人がいるが、それとて真摯な態度ではない。上司が工数調整をしてくれないのなら、自分から掛け合いにいくことが大原則である。「でも、上司はまともにとりあってくれないんです」と、またすぐに悲劇の主人公モードになっていく人がいる。いやいや、上司が悪いって言っていても、そんな上司がリアルな上司なのだから、早々に諦めてはいけない。

 1回、2回かけあっただけで諦めるのではなく、3回、4回とかけあおう。それが本気の見せ方、本来の真面目な態度である。上司との調整を面倒がって、自分が仕事を抱え込んだのなら、悲劇の主人公シンドロームまっしぐらだ。それは、誰も幸せにしない選択を自らしたことと同義だ。上司が悪いのではなく、調整・交渉を十分にしていない自分に原因があることを自覚しよう。いつだって、変えられるのは他人ではなく自分であるという大原則に立ち返ろう。