例えば、児童への性的虐待などの違法コンテンツやヘイトスピーチ(憎悪表現)、偽情報、違法商品・サービスなどの速やかな削除を義務づける。また性別や人種、宗教などの個人情報を基にしたターゲティング広告を禁じる。子供を対象にしたターゲティング広告も禁止する。違反した場合は、世界年間売上高の最大6%の罰金を科される可能性がある。今後、欧州議会と加盟国による最終合意を経て、早ければ年内に施行される見通しだ。

ツイッター広告事業、ボイコットに直面か

 一方、「ツイッターをサービス開始当時のような自由な言論空間に戻そうとするマスク氏の試みを難しくするのは、EU規制当局だけではない」とウォール・ストリート・ジャーナルは報じている。今後、広告主や利用者、議員、活動家など様々な関係者が圧力をかけるという。

 例えば広告についてCNBCは「マスク氏が今後言論の自由に重きを置き、コンテンツ管理を緩めれば、広告主はツイッターから離れていく」と報じている。企業は自社の広告が誤情報やヘイトスピーチなどのコンテンツの前後に表示されることを嫌う。米JMP証券は、広告主がツイッターから米メタ(旧フェイスブック)や米スナップ、TikTokなどのサービスに流れていく可能性があると指摘している。

 ツイッターの21年10~12月期の広告売上高は14億1000万ドル(約1800億円)で、全売上高15億7000万ドル(約2000億円)の90%を占めた。広告離れは同社の収益構造を根底から破壊するという。

 過去にも例がある。20年には、フェイスブックが問題のあるコンテンツを放置していたとして、大規模な広告ボイコット運動が起きた。同年5月に米ミネアポリスで黒人男性が警官に殺害された事件を受け、人種や民族の差別や憎悪を助長する投稿を放置しているとして同社への批判が高まったのだ。

 最も問題視されたのはトランプ前米大統領の投稿に対する対応だった。死亡事件をきっかけに全米各地で大規模な抗議デモが起きたが、これに対しトランプ氏は「略奪が始まれば、銃撃も始まる」と書き込んだ。当時、表現の自由を重視する方針を示していたフェイスブックはこの投稿を容認した。最終的に1100社以上がフェイスブックへの広告出稿を停止したと言われている。

 CNBCによると、17年には米グーグル傘下の動画配信サービスYouTube(ユーチューブ)で、暴力的な動画に広告が挿入されたとして、米コカ・コーラや米マイクロソフトなどが広告出稿を停止した。

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