資金だけでなく、VCのノウハウも活用すべき

 近藤氏は、上場までに数回VCからの支援を受けている。「VCにもそれぞれ特徴があり、最初は資本政策に強いところと組ませてもらい、事業の基盤をつくることができた。次は、当社がSaaSを始めたころで、SaaSに詳しいVCにお願いして、ビジネスモデル作りの支援をしてもらった。お金だけではなく、企業のステージに合わせたノウハウを提供してもらうことも、VCとの関係では重要だと思う」

 鈴木氏は、「当社は一度、5社のVC連合からの支援を受けた。一番よかったのは、基本的に事業は当社に任せてくれたことだった。ただ、重要なポイントでは非常に鋭い突っ込みが入って、それに答えていくことで、経営としての考えをまとめることができた。今は上場して、株主から質問を受けているが、このときのVCとのやりとりが生きていると思う」と語る。

 この点について大櫃氏は、「スタートアップが事業会社のファンドから資金提供を受けている場合、『自由に使ってください』と渡されることが多い。これだと、苦言を呈する人が周りにない、緩い環境に陥りやすい。私は、スタートアップは何度か金融機関やプロのVCから資金調達して、事業のチェックを受けるべきだと感じている」と語る。

 最後に大櫃氏は、IPOは、両社にとって何をもたらしたのかを改めて質問した。

 近藤氏は「IPOは手段。何の手段かというと、一つは当然だが、資金調達の多様化。次に、会社としての信頼度の向上になる。厳しい審査に耐える組織を作ることができるからだ。そして、人材採用でもいい効果が出る。当社はIPOによって、この3つを得ることができた。事業としては、IPOによってさらに大きな市場を狙えるようになったので、中小企業の労働生産性の解決に向けて少しでも寄与できるように努力していきたい」と語った。

 鈴木氏は「IPOは楽しいイベント。これから取り組む企業はぜひ挑戦してほしいと思う。しかし、IPOは決してゴールではない。むしろ、やれることが大きく広がる機会。当社も、ここからどんどん成長していきたい」と話す。

 大櫃氏は、「多くのIPOした企業を見てきたが、共通しているのは、会社が成長するのと同じようなスピードで経営者も成長しているということ。スタートアップにとっては非常にやりがいのある挑戦だと思う」と、これからIPOを目指すスタートアップに対してメッセージを送った。