福岡市のスタートアップ支援施設「Fukuoka Growth Next(FGN)」は2022年3月17日、スタートアップカンファレンス「CALLING Vol.3」を開催。今回は福岡地域戦略推進協議会、みずほ銀行、九州大学との共同開催となる。

 2021年からスタートしたCALLINGは3回目。今回はスタートアップ、その支援や協業に取り組む会社・投資家、起業を目指す人に向けて行われた。コロナ禍により第1回、第2回はリモート開催だったが、今回は初めて「リモート+リアル」のハイブリッドで開催された。

 開催に先立ち、福岡市の髙島宗一郎市長がビデオメッセージで登場。「福岡からでも世界を変えていくことは可能。そのためには新しいサービスを創るだけでなく、それを社会に実装することが必要。コロナ禍など、社会が激変する中で、ビジネスの在り方も変わらなければおかしい。今回は『STORY』というテーマで、スタートアップと支援者の方の対話から、新しい一歩が踏み出せることを期待している」と語った。

福岡市の髙島宗一郎市長はビデオメッセージで登場

福岡には立場を超えて助け合う気質がある

 続いて行われたオープニングセッションは、FGN運営事務局長の内田雄一郎氏、福岡地域戦略推進協議会(FDC)事務局長の石丸修平氏、九州大学副理事(産学官連携担当)の大西晋嗣氏の3名が会場で登壇。加えて、みずほ銀行取締役副頭取の加藤勝彦氏がオンラインで参加。それぞれの立場から、福岡における産学官民のスタートアップ支援体制について説明した。※2022年3月時点の役職。同4月1日に頭取就任。

みずほ銀行取締役副頭取(当時)の加藤勝彦氏はオンラインで登壇

 福岡市は、2012年にスタートアップ都市を宣言。今年でちょうど10年と節目を迎えた。FGNは2017年にスタート、19年から2期目に入っており、入居者は約150社、スポンサー企業は33社に上る。資金調達額は累計で250億円に達した。 ※2022年2月末時点

 福岡スタートアップ・コンソーシアムの事務局を務めるFDCは、福岡を拠点にした産学官民の協議会で、参加者は223の行政・団体。約半数は域外の企業、または大企業で構成されている。

 石丸氏は「福岡にはもともと、産学官民が連帯していく土壌がある。中でも、民間が主導する力を持っている。その一つの形が現在のコンソーシアムだ。事業のノウハウを知りたいスタートアップと、地元の大企業の課題解決という両面のニーズがつながる接点として、ようやくおぼろげながら形が見えてきたところだ」と語る。

 また、これからのスタートアップ支援の展望について石丸氏は、「2020年に内閣府のスタートアップ・エコシステム拠点都市に選定され、産学官民の支援が加速している。いよいよ福岡でエコシステムを形成して、大学や他都市と連携できる段階となった」と語る。

 大西氏は、大学の立場からこう語る。「九州大学は、スタートアップ支援に特に力を入れている。単に起業を志す研究者を支援するだけでなく、研究プロジェクトに、『プレCXO』という形でアントレプレナーにアサインしてもらう取り組みも始めた。研究者とアントレプレナーが二人三脚で、起業の可能性を探索することで、よりビジネスを確実なものにするのが狙いだ。7件のプロジェクトに対して、プレCXOの募集をしたところ、376人という非常に多数の応募があった。これは福岡市に対する全国の期待の表れだと思っている」

 一方、みずほ銀行は2015年から、「イノベーション企業の支援」を掲げる専門部署を他行に先駆けて立ち上げた。現在までに国内外4000社以上のスタートアップとの接点があり、60社以上の大企業から支援を受けている。特にスタートアップの活動が活発な福岡には力を入れており、FGNへみずほ銀行の社員が1名出向しているほどである。

 加藤氏は、「みずほ銀行だけでなく、信託、証券、みずほキャピタルを含めたグループ全体で、福岡のエコシステムを強化できるよう支援していきたい。イノベーション企業の海外進出の支援、海外投資家とのマッチング、金融、非金融の両面から支援する。福岡から世界へ、世界から福岡へのビジネスのために、みずほのネットワークを活用してほしい」と語った。

 メガバンクであるみずほ銀行が、なぜスタートアップ支援に力を入れるのか。その理由を加藤氏はこう語る。「われわれの存在価値は何かと問われると、日本経済への貢献だと思う。それは、グローバルで活動する大企業のM&Aを支援することでもあるが、一方で、経済の新陳代謝という意味では、スタートアップへの支援は不可欠。私は中国赴任時に深センのスタートアップの活気を目の当たりにして、日本もこういうことをしていくべきだと思っていた。みずほは日本のスタートアップを海外の投資家とつなぐところでも仕事をしていきたい。福岡はスタートアップへの理解が深い企業や団体が多い地域だと思っているので、われわれも引き続き、仲間としてやっていきたい」