2021年9月にデジタル庁が発足し、公共セクターにおけるDXが大きく動き出した。人口減少や高齢化といった問題の解決や住民サービスの向上などDXへの期待は膨れ上がる一方だが、実情はどうなのか。デジタル庁による「マイナンバー制度及び国と地方のデジタル基盤抜本改革ワーキンググループ」や、総務省の「情報通信白書アドバイザリーボード」「地方自治体のデジタルトランスフォーメーション推進に係る検討会」などに関わる、武蔵大学社会学部メディア社会学科教授の庄司昌彦氏が、公共DXが求められる背景と課題、今後の展望について解説する。

※本コンテンツは、2022年2月17日に開催されたJBpress主催「第3回 公共DXフォーラム」の基調講演Ⅰ「公共DXが求められる背景とその実践における課題・対応」の内容を採録したものです。

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自治体は民間企業・市民の感覚の変化を理解しなければいけない

 2021年、総務省は「情報通信白書(令和3年版)」を発表した。同白書ではDXについて、物質的な情報をデジタル形式に変換するデジタイゼーションと、組織のビジネスモデル全体を一新するデジタライゼーションを明確に区別。その上で、企業が外部エコシステム(顧客、市場)の劇的な変化に対応しつつ、内部エコシステム(組織、文化、従業員)の変革をけん引しながら、デジタルを活用してネットとリアルの両面での顧客エクスペリエンスの変革を図ることを求めている。これらを踏まえ、庄司氏は公共セクターのDXの意義をこう話す。

「トランスフォームとは『完全に・すっかりと(trans)』+『形が変わる(form)』です。DXには『組織の内部を変え、人々の生活もより良い方向に変える』という意味が込められていると思います」

 民間企業では既に、スマートフォンなどの普及に伴う消費行動などの変化やデジタルディスラプションの脅威、リアル空間を含めたデータの増大・ネットワーク化、デジタル市場のグローバル化を背景にDXを大きく進展させているが、公共DX(自治体DX)は推進状況が芳しくないともいわれている。

「リアル空間を含めたデータの増大・ネットワーク化については、自治体目線でも同じことが言えると思います。多くの自治体にとって目下の課題である人口減少をDX推進により、減速させているケースもあります。今、自治体が理解しなければならないのは、民間企業が提供するサービスのデジタル化によって、企業や市民の感覚が大きく変わっていることです」