学習する組織がDX推進をドライブする
学習する組織とは、どういうものであろうか。ピーター・センゲが30年前に著書『学習する組織』の中で、不確実性が増す事業環境にあっては、常に進化し続けるために、高度な「学習能力」が必要だ、と指摘している。
目的に向け、効果的に行動するには、集団としての意識と能力を継続的に高めていく組織がなければならない。そうした中で、社員は自己との向き合い方、本質を見抜く思考法、幅広い視座、対話する力、理念や価値観の共有を行っていく。あらゆる課題に対し、創造と再創造を繰り返す組織開発メソッドである。
日本でも先進企業を中心に取り組んできた例はあるものの、広くは定着しなかった。それが、パンデミックという脅威の中で、DXという解のない経営環境を乗り切るために、改めて学習する組織の重要性が求められているのである。
多くのビジネスパーソンが、個別の言葉は聞いたことがあるだろう「自己マスタリー」「システム思考」「メンタル・モデル」「チーム学習」「共有ビジョン」という5つのディスプリンだ。これによって、組織の課題に取り組んでいくことが求められる。これが未来の組織の在り方を示しているといわれるゆえんである。
不透明な時代には、全社員の知恵を結集していくラーニング・ジャーニー(学びの旅)が必要となり、これはDX成功への近道でもある。
今回は、DXを進めていくための「人材育成の考え方」を紹介した。DX人材の採用や育成は人事部門で片付くものでなく、経営者やCDO(チーフデジタルオフィサー)との連携で採用や教育をしていかなければならない。その役割は、これまで以上に大きい。改めて、この考えに基づき、自社のDX戦略を策定・見直していくのがよいだろう。
最終回の次回は、デジタル化へのステップと、求められる人材の配置について紹介したい。
コンサルタント 毛利大 (もうり だい)
デジタルイノベーション事業本部 本部長
シニア・コンサルタント
生産戦略と呼応した生産システム再構築を領域とし、新工場建設、生産プロセス再設計領域で活躍。JMACスマートファクトリー構築のコアコンセプト「TAKUETSU Plant Design Method」「スマートファクトリーイメージセル」を考案。デジタルをテコとしたものづくりのあり方、Dx推進の在り方を常に研究し続け発信。
コンサルタント 神山洋輔 (かみやま ようすけ)
デジタルイノベーション事業本部
スマートファクトリー推進室室長
入社以来、一貫して生産領域のコンサルティングに従事しており、生産戦略立案から現場改善・成果創出まで幅広い支援を行っている。
新工場建設や生産システムデザインに多くの実績あり、デジタルを活用したものづくり革新やスマートファクトリー構築支援を推進している。