破壊的イノベーションを恐れるな
ハーバード・ビジネス・スクールのクリステンセン教授が著した『イノベーションのジレンマ』の中で、既存事業の秩序を破壊しても業界構造を変えていく「破壊的イノベーション」が触れられた。DXとは、ITの延長戦上にあるものではなく、破壊的イノベーションそのものであるといわざるをえない。
経営の危機感を募らせたトップが「AIを使ってなにかやれ」と号令を出したというのは、よく聞く話だ。明確なビジョンが描ききれないトップは、部下に丸投げして考えさせる。まさに、戦略なき技術起点のPoC(Proof of Concept)であり、部下にとっては疲弊するだけ、結果としてDXの失敗となる。経営戦略やビジョンが提示できていないトップと、それをどう解釈すればいいのか悩む部下。まさに両者にとって不幸な出来事である。
データとデジタル技術の活用によって、どの事業分野でいかなる新価値を生み出すか。新ビジネスの創出、即時性やコスト削減をも考慮したビジネスモデルの構築。これがDXなのである。
DXを推進するには、ビジネスや仕事のやり方、組織・人事の仕組み、企業文化・風土そのものを変革していかなければならない。そして、経営トップ自らがこれらの変革に強いコミットメントを持って取り組む表明をすることが大事なのである。なぜなら、社内での抵抗勢力が大きな場合に、トップのリーダーシップがあればこそ、その方向性が示され、英断がなされるからだ。