サプライチェーン混乱、iPhoneに影響

 アップルなどの電子機器メーカーは現在、世界的なサプライチェーン(供給網)問題に直面している。同社のルカ・マエストリCFO(最高財務責任者)は先の決算説明会で「業界全体の半導体不足と、東南アジアの新型コロナに伴う製造上の混乱があった」と説明。同社の21年7~9月期の供給制約による逸失売上高は約60億ドル(約6800億円)で、4~6月期の30億ドル(約3400億円)弱から倍増した。10~12月期はさらに悪化すると同社はみている。

 一方、鴻海は21年10~12月期の業績について、スマホを含む消費者向け電子機器部門の売上高が、前年同期比で15%以上減少するとの見通しを示している。同社は半導体不足がこれまでの予想を超え、22年7~9月期以降も続くとみている。

 また、ロイターによると、米中関係の緊張や貿易摩擦がアップルなどの米国電子機器メーカーの製造分野に暗い影を落としている。こうした中、同社は台湾企業と協力し、インドなどの中国以外での生産強化を図っている。

 アップルは台湾大手との連携で、17年にインドでiPhoneの旧モデルの生産を開始した。20年には鴻海がチェンナイ工場でiPhone現行モデルの生産を開始。インド生産を本格化させた。

台湾3社、インド生産拡大で9億ドル投資

 鴻海と緯創資通(ウィストロン)、和碩聯合科技(ペガトロン)の台湾3社はインドでのスマホ生産に5年間で総額9億ドル(約1000億円)を投じる計画だと報じられている。ロイターによると、「PLI(プロダクション・リンクト・インセンティブ)」と呼ぶインド政府の補助金制度を活用するもので、鴻海は約400億ルピー、緯創資通は約130億ルピー、和碩聯合科技は約120億ルピーを投資する。

 インド政府は、携帯電話や特定電子部品の国内生産を後押しするために補助金を拠出する。19~20年を基準とし、国内生産製品売上高の増加分に対して4~6%の金額を5年間支払うという。

 3社はこれを活用し、インドにおける生産能力の拡大を図る。ロイターによると総額9億ドルのすべてがアップル製品の設備などに向けられるかどうかは分からない。だが、事情に詳しい関係者は大部分がiPhoneの生産に特化すると話している。

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