緊急事態宣言の解除により、飲食店やワインショップ、ジャーナリストに向けたインポーターによる試飲会やワインと食のイベントも小規模ながら復活してきた2021年末。これまでであれば生産者の来日が相次ぎ、たくさんの新商品が日本に導入、紹介されていた時期なので、まだまだ100%には程遠いけれど、そんななかでも、実際に筆者が飲んで、気になったワインを6本だけ、紹介したい。
文=鈴木文彦
(1)世界最古のワイナリーのひとつ、ドイツの甘口め白ワイン
ドイツで、817年に皇帝ルートヴィヒ1世が所有したという畑と、その畑に囲まれるかたちで、12世紀に建てられた修道院が現在のワイナリー(シャトー。ドイツ語でシュロス)の起源、という世界で最も長い歴史をもつワイナリーのひとつ。
当然、ワインの評価も歴史的に高く、1971年、ワイン法によって単一の畑として認定をうける。ラインガウを代表するワインで、現代のワインファンにも有名。こんな名門のワインが2021年7月に、大手、国分グループ本社の手によって日本に輸入され、ついに試飲できた。「ロザラック アウスレーゼ」が素晴らしい。
冷涼なこの地のワインは、ブドウの糖度が上がりづらく、果汁の糖度が高いほど優れたブドウとされ、そのワインは高級品になるけれど、「アウスレーゼ」は上位分類。シュロス・ヨハニスベルクのロザラック・アウスレーゼは甘味を残した甘口めで仕上げられていて、甘味と酸味とのバランスが見事。
希望小売価格15000円(税別)は高いけれど、このレベルのラインガウのワインにはとんでもなく高いものもあるから、この品質から考えればバーゲンかも?とおもってしまう。辛口なら「ジルバーラック トロッケン」(10000円)も素晴らしい完成度で、両者ともに女王の気品。
販売元:国分グループ本社
(2)親しみやすいスパークリング、北イタリアのフランチャコルタ
プレスランチョンで試し、おもわず「このフランチャコルタ、どこの会社が輸入したの?」 とバックラベルを見てしまった一本。ナチュラルなワインを得意とするテラヴェールの名前を見て、なるほど、と納得。
シャープなシャンパーニュと比較すると、どこかアットホームな雰囲気を感じさせるのがフランチャコルタ。ブドウがよく熟すから、ドザージュ(完成後の甘味による味の調整)をほとんど必要としない、というのも、その独特の雰囲気の理由のひとつ。しかしこのワインはむしろ、ちょっとシャンパーニュ的というかブルゴーニュ的雰囲気で、親しみやすさのなかにも、ブドウ、畑の個性、造り手の土地への愛が、ここにはこもっているのだ、という主張を感じる。ファミリーの温かい食卓に。
販売元:テラヴェール